「マラーホフの贈り物」は、マラーホフを中心に、
彼が共演者を見つけ、プロデュースするガラ公演です。
「ガラ公演」というのは、通しで全幕ものをやるのではなく、
有名な演目のソロやパ・ド・ドゥのパートだけを集めて、
有名なプリンシパル・ダンサーがそれらを一つか二つずつ踊る、というものです。
いっぺんに上手い人たちだけを観られる、といううまみもあるけれど、
全幕ものの魅力を知ってしまうと、
グラン・パ・ド・ドゥだけ踊るのではかえってフラストレーションがたまることも。
また、
有名どころをそろえる、といっても、目玉は一組か二組で、
あとは新人だったりご当地のダンサー代表だったり、ということもままあり。
ところが、
今日はちがいました。
とにかく、粒ぞろい。一流の人たちが自分の持てる力を存分に発揮して、
オーラが次々とほとばしるステージとなりました。
特に、第三部。
第一部でアロンソの「カルメン」を踊り、
魅惑的・かつ正確無比な身体の使い方で劇場を興奮の渦に巻き込んだボリショイのプリマ、
マリーヤ・アレクサンドロワは、
第三部の一番手。
「白鳥の湖」から黒鳥のパ・ド・ドゥを踊って期待通りの切れ味。
一度幕が下りて、お決まりのカーテンコールからひっこんでも拍手はなりやまない。
二度目のあいさつ。
二番手は、本命ポリーナ・セミオノワのソロ「アレス・ワルツ」。
第二部の「白鳥の湖」(第二幕を通しで)では、
美しく流れるようなパフォーマンスながらもオデットの心にある宿命の重さまでは演じきれず、
「好きな人に会えてうれしい」オデットに終始してしまった感があったポリーナも、
「アレス・ワルツ」では長い腕や脚を十分に生かし、絶妙の身体バランスでオリジナリティを発揮。
アレクサドロワに劣らぬ拍手をもらっていました。
となると、三番手はもっとやりにくかろう、と思いきや、
「スプレンディッド・アイソレーション」のイリーナ・ドヴォロヴェンコ(ABT)がまたまた好演。
身の丈の倍はあろうかという長い裾の純白のイブニングを舞台の真ん中に花のように広げながら、
その長いドレスを巧みに取り入れた振り付けは見事で、
まるでミューズの降臨のごとく神々しい。
相手役のマクシム・ベロツェルコフスキーも
第一部の「くるみ」より切れのよい動きでイリーナを盛り立てる。
実生活でも夫婦である二人による、純粋で強い愛の物語が心にしみ入りました。
しんがりは、「ドン・キホーテ」。
キトリを踊るヤーナ・サレンコは、
第一部の「エスメラルダ」で「これぞ踊り子!」というソロを披露していました。
片足で立ちながら小さなタンバリンを、浮かせた足に、膝に、と軽く打ちつける仕草。
流れてくる音楽に合っていそうで、わざとちょっとずらしたような心憎いリズム。
ああ、パリの広場で踊るジプシーのエスメラルダも、きっとこんなふうに踊り、
こんなふうに観客を魅了したのだろう、と思わせる踊りだった。
ヤーナは「ドン・キ」のキトリでも重心のまったくぶれない回転やバランスを見せつけ、
トリにふさわしい貫禄を見せていました。
いずれ劣らぬプリマたちの、火花散る競演!
一人として似たものはない。
自分にしかない魅力全開!「どお?」とばかりに見栄を切る。
ガラは、お祭り。こうでなくっちゃ!
男性陣については、明日また書く予定です。
とにかく、女性の素晴らしさにうなりまくった一日でした。
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