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「ロミオとジュリエット」(マクミラン版)


英国ロイヤル・バレエ/ケネス・マクミランのロミオとジュリエット
英国ロイヤル・バレエ/ケネス・マクミランのロミオとジュリエットを、私は3種類観ています。
ジュリエットがアレッサンドラ・フェリのもの(LD。上のDVDと同内容)。
ジュリがマーゴ・フォンテーンでロミオがルドルフ・ヌレエフのもの(LD)。
ジュリがダーシー・バッセル、ロミオがアダム・クーパーのもの(ナマ)。
フェリのジュリエットは本当に初々しく、このバレエは彼女を中心に回っています。
幼いジュリの、「ロミオ命」とばかりにどんどん積極的になっていくところが、
妖精のようなフェリによって演じられます、
というか、フェリこそジュリそのものっていう感じ。
いろいろなプリマが、いろいろなバレエ団で、いろいろな振り付けのジュリエットを踊っていますが、
この初々しいフェリのジュリエットは別格のものとして語り継がれています。
逆に天下のマーゴはもうかなりのおトシの時の映像。
いわば「放浪記」の森光子。若さや勢いではフェリにかないません。
でも、やっぱり名優というのはスゴイ。カワイイのであります。
とはいえ、このバージョンは、ジュリではなく、ロミオが主役。
ヌレエフのロミオは、怒涛の勢いでジュリエットに迫ります。
大体、町を二分するような抗争相手の家の舞踏会に、
そこで有閑マダムに会いたいがためだけに潜入するという、
ホントにおバカな不良少年たちの話なんだから、
この「無鉄砲なロミオ」という役作りが、私にはとても新鮮であると同時に「納得」でもあった。
抗争相手のティボルトに見つかって顔を見られそうになると、
フェリ版ではロミオ役のイーグリングが仮面のまま顔をそむけます。
そこを、ヌレエフは仮面をバッと脱ぎ捨て、
真正面から睨み返すのです。「そうだよ。ロミオだよ。悪いか?」みたいな。
この場面が好き。バカだけど、誇り高い名家の息子らしい。
そして圧巻は墓場のシーン。
仮死状態とは知らず、ジュリが死んでしまったと思い込んだロミオが、
ジュリを掻き抱いて踊るんです。
「昔、こうやって愛を囁きあったね。こうして踊ったね」って。
この時の、マーゴの死体の演技が天下一品。
二人の珠玉のコラボが、涙を誘います。美しすぎます!
この二つに比べると、クーパーのロミオはちょっと中途ハンパだったかな。
最後の墓場のシーンでは、
嘆きにまかせてジュリの死体を振り回してしまい、ウツクシクなかった。
これを観たあと、フェリ版を見直すと、
ロミオのイーグリングは、全編を通じ、実に優雅に踊っているのです。
フェリのよさをしっかり支えています。
リアリズムだけでは、舞台の感動は成り立たないと知りました。

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