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ボリショイの「白鳥の湖」

やっぱり、ボリショイの「白鳥の湖」は違った!
ほんとに音がしないんだもん。
マリーヤ・アレクサンドロワなんて、あんなに大柄なのに。
他の白鳥たちもすごくよかった。
四羽の白鳥だって、完璧!
白いバレエには、完全ノックアウト状態。鳥肌ものでした。
マリーヤに関しては、きっと白鳥より黒鳥が似合うだろう、と
何となく思って行ったのですが、あにはからんや。
白鳥がよかった。
技術的なこともさることながら、
オデットの恋心を表す目の演技が素晴らしい。
王子の腕が触れたその瞬間、伏し目がちだったのがぱっと目を開くところとか。
背中でしなだりかかりながら、王子のうなじ越しに彼をみつめるところとか。
息をつめながら見てしまいました。
バレエとは、けだしセリフのない演劇であります。
男性陣では、
道化役のヴァチェスラフ・ロバレーヴィチの切れがよく、
大きな拍手をもらっていました。
ていうか、
王子役のアルテム・シュピレフスキーが…。
顔は要潤ぽくてかっこいいんだけど、
どうなんでしょ、
これで主役踊っちゃっていいの?っていうくらい、
ソロで踊れない人で。
フィギュアスケートでいえば、トリプルジャンプが回りきれてなくて減点!みたいな。
体が重く、切れもなく、跳べない、回れない。
黒鳥とのグラン・パ・ド・ドゥのコーダなんか、
マリーヤが32回のフェッテを高速でやった後で、
彼の番はレコードプレーヤーが壊れたのっていうくらいスロウなテンポ。
エッチラオッチラまわって、またマリーヤが現われると速くなるという始末。
今回、男性の主役には恵まれなかったわー。
仕方ないのよね。ほんとはフィーリンが踊るはずだったところだから、
新しい人にチャンスを与えているのでしょうから。
あと、美術・衣裳には目を見張りました。
特に城内と城内の貴族たちの衣裳はすごい。
ダンサーたちが金色基調、キャラクターダンサーは一幕が赤と黒、二幕では青。
そして、王子だけは、白。
場面で着替えるのではなく、あくまで「白」で通すところに、
グレゴローヴィチの演出意図が見えてきます。
グレゴローヴィチ版の「白鳥」は、
「なぜ王子は白鳥と出会ったか」
「なぜオデットは白鳥になったのか」など
ストーリーの整合性をまったく無視。
誕生日プレゼントに王妃が弓矢をプレゼントする場もなく、
みんなが狩りに行く場面もなく、
一人でたたずむ王子の前にロットバルトが現われて幻惑し、
気がつけば白鳥たちがそこに。
オデットにしても
「お願い、白鳥たちを殺さないで」も
「私の涙であの湖はできました」もない。
さきほど
「バレエはセリフのない演劇」と書いたけれど、
ボリショイの場合、「筋書きのない演劇」とも言える。
踊りの中に、ドラマがあるから。
3分の中に永遠を閉じ込め、
そういう場面をつなげていったような、そんな感じでした。
「どうして」「なぜ」は足手まといのもと。
つじつまを合わせんがための、なくもがなのプロットは捨て
本当にスリム。
舞踏会でも、各国の踊りが終わるまで、王子は出てきません!
王子が出てきて王女たちとちょっと踊って拒否して、
オディールが出てきて踊って誓って、と息つくヒマもございません。
そのうえ4幕のところを2幕にしていますから、
集中して見ていたこともあり、最後の方は、かなり疲れました。
それにしても、
ボリショイのコールドは、ほんとにイケメンが多いです。
やっぱり、美しいって、それだけで人をシアワセにできる力があるのね…。
バレエを観にきてるのに、
思わずオペラグラスで顔なんか見比べちゃったりして、
ヒジョーに不純でした(汗)。

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