モーリス・ベジャール/ベスト・オブ・モーリス・ベジャール-愛,それはダンス-
モーリス・ベジャールが亡くなった。
80歳。
戦後のバレエ界に衝撃をもたらすとともに、
その鮮烈な印象を薄れさせるヒマを与えず、
次々と新作を世に送り出してきた巨匠。
伝説にして、かつ現役。
ローラン・プティとともに、20世紀をリードしてきた振付家である。
ベジャールといえば、
映画「愛と哀しみのボレロ」冒頭の、
ジョルジュ・ドンが踊る「ボレロ」がもっとも有名だが、
彼の代表作は、何といっても「春の祭典」。
1959年、
舞台をキャンバスに、集団を配置して描く生と性のエネルギーは、
スター不在でもステージは作品によって輝くことを証明した。
そして、
私が大好きなのは1994年の「中国の不思議な役人」。
70歳になろうという人間が作る作品か?というほど、
斬新・妖艶・残酷。
人間の社会がフタをした、人間の本当の顔を、
地下の一室のごとき埃っぽい空気感の中で爆発させる。
三島由紀夫をモチーフに作られた「M」は、
ステージの上に「時」のキャンバスを何枚も作り、
見事に次々と描きあげていった。
その場面場面の静謐さに、
まだそれほどバレエを知らなかった頃の私でさえ、
一瞬心打たれ、涙したほど。
「ベジャールのくるみ割り人形」に見られるいたずら好きの童子の顔を持ち続け、
晩年は巨漢をもてあましつつも、精力的に人生を謳歌したベジャール。
冥福を祈るとともに、
心からありがとうをいいたい。
合掌。
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