シェイクスピアの原作で、ロミジュリがどんなふうに終わるか、
知っていますか?
領主ヴェローナ大公が、モンタギュー・キャピュレット両家長に
「喧嘩ばかりしてるから、神様がわざと息子と娘を愛しあわせ、死なせて
お前たちに天罰をくらわせたんだぞ」と諭すと、
ジュリ父ロミ父が歩み寄り、
二人の死を無駄にせず、仲直りしましょう、という終わり方なのです。
シェイクスピアを演る場合、
どんなに演出法が奇抜でも、セリフは変えないというのが世界的な流儀になっています
(場面をカットすることはある)。
蜷川幸雄しかり、ディカプリオの映画みたいに現代に置き換えても、
セリフはそのままです。
セリフのないバレエでも、それは同じこと。
このくだりを忠実に演出しているものがほとんどでした。
オペラ座のロミオとジュリエットもそういうコンセプトです。
しかし21世紀になって、その傾向が少し変わってきたように思います。
私が観たのは2002年のチューリッヒバレエ団と、
2005年のシュトゥットガルトバレエ団のもの。
どちらも、モンタギュー家とキャピュレット家の間の憎しみが非常に根の深いものであることが、
演者の表情や身振りから伝わってきます。
そしてラスト、大公はたしかに仲直りしろといいます。
両家の家長は、苦々しく握手をするけれど、
それは仕方なく交わしたパフォーマンスであることがわかります。
愛する二人の棺をかつぐ若者たちは、すれ違いざまガンをとばし、
すぐにでも次の抗争が勃発しそうな勢いです。
「ボスの子どもが愛し合っていたからって、何だっていうんだ」
「俺たちは絶対にあいつらを許さない」
2001年9月11日。
この日の衝撃は、物語の世界にも及んでいます。
現実のどうしようもなさが、
フィクションでのきれいごとを許さないのです。
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