昼の部があまりに面白かったので、
この座組みで千本桜もどこまでいけるかどうしても見たくなり、
続けて夜の部のチケットを購入。
「すし屋」の段、出来がよかった。
権太は愛之助、弥助が染五郎、お里が壱太郎。
壱太郎のお里は、まるで文楽人形のようで可愛らしく、
またその一途さが心に響く熱演であった。
染五郎は弥助と維盛、世話物と時代物をしっかりと演じ分け見事。
お里と、情を交わしても二世は契れぬ、という
言ってみれば「ただの男と女のうちはベッドインはするけど結婚はしないよ」っていう状態を
「男の身勝手」ではなく「仮の姿で落ちのびようという者のぎりぎりの選択」として
ちゃんと説得力を持たせているところがさすがである。
ここが効いているので、
(そんな)維盛のために妻子の命まで差し出す権太の面目が保てる。
ここでも獅童の景時が大きくて立派。
敵役でありながら、爽やかさが垣間見え、「実は」の伏線を体現している。
「研辰の討たれ」は、
辰次役で染五郎が新境地である。
二枚目半の若旦那風でコミカルな演技は今までも見せていたけれど、
ここまでいじましい男をストレートにいじましく演じたのは初めてではないだろうか。
愛之助も、今までは敵役をやってもどこか甘ったるさが邪魔になったが、
今回は一途に仇を追い詰める九市郎がシャープ。
演目としては、「基本形に忠実に」やったそうである。
初日に近いこともあってまだスムーズでない部分もあるかもしれないが、
場面転換のたびに幕が下り、場面数も多くて多少だれた。
彦山権現の通し狂言と同じで、
筋がわかるように通しでやるより、名場面が印象的な話なのである。
なるほど、野田秀樹が大幅に作り変えてしまいたくなった気持ちがわかった。
- 舞台
- 20 view
この記事へのコメントはありません。