「大當り伏見の富くじ」は、
文字通り、大当たりの興業である。
これは大阪世話物を元として松竹新喜劇でも扱っている本を
今回「大阪の人を絶対笑かす歌舞伎にしてみせる」という意気込みで改作したもの。
染五郎を中心とした若手俳優の意欲と、
その勢いに負けじとはじける歌六らベテランのチームワークがよく、
また、黒子や照明その他、スタッフの創意工夫やガンバリもあいまって
「若手歌舞伎」とは多少はみ出したってこういう実験的なものをやる場所さ、と
120%満足する演目である。
「実験的」と言っても小難しいところは一つもなく、
お話の、筋は単純だけど人の気持ちは複雑なところがよく描けていて、
スピード感あり、楽屋ネタあり、現代的なところあり、
でもマジメなところはマジメにやるぞ、と
歌舞伎とは、贔屓の役者がフィーチャーされて、やんややんやと喝采できるもの、
とその原点を見ることが出来て、幸せな気分で劇場を後にできる。
こんな面白い歌舞伎、ある?っていうくらい、面白い。
ぜひぜひ東京でも再演を願う。
「慶安の狼」では、
丸橋忠弥役が中村獅童。
獅童は「瞼の母」「一心太助」と時代の下ったもので大役を任されるようになって、
どんどん質が上がっている。
立ち回りや所作も重みが増し、声も通るようになってきた。
スター性のある人だけに、これからが楽しみである。
彼のさらなる精進を期待したい。
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