今月歌舞伎座の夜の部は、
成田屋のかんげん君初お目見え、
仁左衛門丈の「仙石屋敷」
幸四郎丈の「勧進帳」
海老蔵丈の「河内山」と4本もあります。
私は前半で一度観たのですが、
仕事帰りということもあって、「仙石屋敷」のニザ様由良之助をじっくり見てご飯を食べると、
その後の2本は半ば夢の中になってしまいました。
とりわけ高麗屋親子の「勧進帳」は、
大好きな作品であるにもかかわらず、全体に弛緩した舞台で、目が開いていた部分も納得がいきませんでした。
そこで千秋楽、一幕見でリベンジ。立見でしたが非常に満足しました。
幸四郎は気合みなぎる弁慶、富樫も関を守るに一歩もひかない強さがあって、
とりわけ「山伏問答」はゆっくりから始まりクレッシェンド、スピードも速まって頂点へ!
その緊張感たるや素晴らしいものがありました。
義経打擲のところも、「打つ前にあそこまで錫杖をおし戴いて頭を垂れたら、
合力が高貴な人の変装だとわかってしまいそうなものだけど、
それからがすごい!
もう髪振り乱してというか、狂ったように打擲しまくる!
「もういいよ、やめてよ」と富樫言いたくなるのわかる。
相手が義経だってわかってるからこそ、「やめてやめて!」ってなる。
「あなたがどうしてもっていうからやめるけど、ほんとならぶっ殺してるところだ!」っていう弁慶が
ほんとに義経殺しちゃいそうでっていうくらいすごい。
富樫が、義経を通しちゃうという、関守としてものすごい裏切りをするはなぜか。
敵味方に分かれるのはその時の運。同じ武士として弁慶に惚れた富樫の心情を今までもっとも感じられた。
向こうも命を賭けている。
自分も命を賭けて、正しいと思うことに進もう、という気持ち。
そういう人に出会ったら、酒の一つもふるまって、
同じ気持ちを酌み交わしたいという気持ち。
そういう富樫の「職業人」としての心を、私は今までなかなか感じることができなかった。
これからは、勧進帳の見方がまた変わるような気がする。
延年の舞も緩急があり、姿大きく、本当に二度観てよかったと思うとともに、
一度の観劇でひと月の公演を断じる怖さも改めて身に染みました。
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