BS朝日で昨日の夜9時から、
「芸と素顔に密着!片岡仁左衛門の魅力~いまをみつめて~ 」をやっていました。
静岡朝日放送制作のドキュメンタリー番組です。
孫の千之助くんとの連獅子から始まり、
昨年から今年にかけて取り組んだ様々な舞台について、
その舞台裏から本番から、垣間見ることができました。
孝太郎さん(仁左衛門さんの息子で、女形)ががすごかった。
稽古でへろへろになって、足も痛めて動けない千ちゃんに
「君はプロでしょ?」と正す。
「へ?」と怪訝な千ちゃん。
無理もない。たった11歳なのだ。
しかし父親はたたみかける。
「プロでしょ? 芸名もってるでしょ。歌舞伎役者でしょ」
だから、
25日間、怪我なく舞台を務められるように、体を管理しなくてはいけない、と。
「これは年齢関係ないよ」
千之助くんの連獅子は、本当に華があった。
その「華」のつぼみは持ってうまれたものかもしれない。でも、
努力なしには決して開花しないものなのだ、と改めて感じました。
「心」を大事に演じさせようとする仁左衛門に応え、
千秋楽を終えた千之助くんが
「心」を大事にするだけでなく、
その心を場面場面で「変化させる」ことも学んだと話すところに恐れ入りました。
愛之助さんと獅童くんに稽古をつける仁左衛門さんも厳しかった。
愛之助さんの義賢の舞台にはとても感じ入ったので、
「人物が小さい!」などと注意を受けている愛之助さんを見ると、
あの段階から積み重ねて積み重ねて、格を感じさせる舞台にしていったんだな、と
こちらも日々の研鑽に頭が下がります。
義太夫のセリフの意味をとても大事にする仁左衛門さんですが、
「私が分からないものは、お客さんはもっと分からない」と
内容に緩急をつけてカットするところはカットする、という大胆さも併せ持つ。
常に「お客さん」を意識する彼らしい取り組みようです。
松竹座興業では震災チャリティーと銘打って、
通し稽古(いわゆるゲネプロに当たる)の観覧も企画したんですね。
上方歌舞伎では最も古い家柄でありながら、
関西での歌舞伎人気の下落によって、
アウェイである関東に新天地を求め、端役に甘んじた若き日々。
「歌舞伎の家柄」などというと、
私たちはお坊ちゃまたちが敷かれたレールを格式にのっとり歩く、
そんな連想をしがちだけれど、
現代生活と乖離した部分の多い伝統芸能を守り続けるとは、
(それも文化保護にお金を出さない国で)
本当に大変なことなのです。
その上、人気が出た後に大病をするという個人的な「大変」も重なり、
その「大変」な時代をくぐり抜けてきたからこそ、仁左衛門さんの芸は
まっすぐで、力があって、気迫がこもっているのだ、と納得そして感服。
押しも押されもしない名優となった今でも、
東京に出てきたばかりに買った水入れを、化粧のたびに使い続ける仁左衛門丈。
100円くらいで買った、というその水入れは
「あの時代を忘れない、という戒め」でもある、と彼は噛みしめるように語る。
初めて仁左衛門さんにインタビューをしたときは、
お恥ずかしいことに舞い上がってしまい、
聞きたいことを先走り、
彼の深いところをあまり引き出せないままに終わってしまった反省があります。
今回のドキュメンタリーは、長期密着ということもあり、
非常にリラックスして本音で語る仁左衛門さんが見られ、
私もいつかもう一度、
しっかりと彼に語らせられるインタビューをしてみたいと思いました。
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