八月花形歌舞伎は第三部の通狂言「東海道四谷怪談」を見ました。
ここのところ、女形としてめきめきと実力をあげている勘太郎の
お岩さんを見たかったのがい1番、
そして海老蔵が伊右衛門をどう演じるかが2番。
感想。
海老蔵の色悪DV男は真に迫りすぎ。
ほんとにワルですが、こういう男に女は惚れたらいれこむね。
女に仕掛けるウソが巧みで、これじゃコロッと騙されるだろうし、
赤ん坊の泣き声にいらだつところ、
気に食わないことが起きるとストレートにじゃけんなところ、
声を荒げるところ拳をあげるところ、
もう、怖い……。
ブルブル震えながらじっと海老蔵(じゃなくて伊右衛門)から目を離さない
ぺたーーーっとしたDV被害者お岩を演じる勘三郎も、
「愛してほしい」と「ぶたないで」とで揺れる女心を熱演。
この2人のねっとりした愛憎に比べると、
七之助のお袖は重要人物としての身の上を背負ってない感じで淡白。
「三角屋敷」の場がないという筋上の力学も関係しているけれど、
この前同じ演舞場で見た猿之助版四谷怪談で、笑也の見せた
どこにも隙のない緻密で陰影のあるお袖に比べると、
役どころの掘り下げ方がまだ未熟であると感じられた。
獅堂の直助は、見得を切るときのセリフがわざとらしく感じられたのは私だけ?
お袖に惚れて惚れて、という直助の気持ちは素直に伝わってきただけに、
「そのセリフ、そこまで意味ありげにいう理由はどこに?」と
物語の入り口で立ち止まらされてしまったのが残念だった。
今回、
海老蔵っていうのはすごい役者だと改めて感じた。
持って生まれた宝をもてあましていた時期を過ぎ、
彼が自分を磨き始めていることは、本当にうれしい限りである。
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