ようやく、勘三郎の逝去を受け入れられたかと思ったら、
今度は團十郎の訃報が……。
不安はあった。
夏ごろから、團十郎の声にかすれが混じり、
体調が万全でないことがうかがわれた。
勘三郎休演の穴を埋めるため、團十郎も仁左衛門もフル回転で、
二人とも大病を経験しているだけに心配していた。
病状について、あまり情報が出てこないことも、
勘三郎丈のときと似ていたから、恐れてもいた。
だから、突然の訃報とはいえ、
衝撃はない。
衝撃ではなく、暗い穴の中にゆっくりと引きずり込まれるような
なんとも重苦しい気持ちである。
いったい、
歌舞伎座の幕はどうやって開くのだろうか?
これからの歌舞伎界はどうなってしまうのだろう?
海老蔵がしっかりと父の死を受け止めているようで、
コメントに少し救われた気がする。
もっとも悲しく、もっとも不安な人に救われてどうする、と思いつつ、感謝。
当面のこととして、
歌舞伎座の公演の代役探しが心配だ。
六月の「助六」は海老蔵がやるだろうけれど、
四月の「鶴寿千載」の雄鶴、「弁天小僧」の日本駄右衛門をどうするか。
五月の「三人吉三」の和尚吉三、「石切梶原」の大場三郎も。
大幹部が首を揃えての公演が続くので、それなりの風格がないと釣り合わない場合がある。
それでまた誰ぞが無理をして、体調を崩すというドミノ倒しにならないことを
切に、切に望む次第である。
他の公演との重なりや、初役であれば稽古の準備など、難しいことが多いだろうけれど、
もし若手が抜擢されたのなら、
この緊急事態をうまく乗り切ってそれを力とし、成長していってもらいたい。
テレビの報道を見ていて、
團十郎丈が最初に白血病に倒れたのは息子・海老蔵の襲名公演の最中で、
57歳であったと改めて思いだす。
勘三郎丈も、息子勘九郎の襲名公演のさ中に病気がみつかり、享年57歳。
襲名披露とは、それだけ大変なものであり、
57歳という年齢も、「80歳に比べればまだまだ」という単純な比較では語れない、
大きなストレスのかかる年代なのかもしれない。
團十郎丈は、2度の「無間地獄」を通り抜け、
その後も長く舞台に立った。その生命力をこそ讃えよう。
ご冥福を心から祈ります。合掌
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