明治座の若手花形歌舞伎は、
昼は亀治郎の「狐忠信」が話題。
染五郎と七之助による「封印切」も。
私が見た夜の部は「牡丹燈籠」と「高杯」で、
「牡丹燈籠」では染五郎と七之助が
新三郎とお露、伴蔵とお峰の二役早変りに挑んだ。
七之介はお峰を好演、
気立てのよさを存分に表し、その一方、
女にありがちな悋気や愚痴の場面も面白い。
どんなに夫婦でいさかいをしても、
貧乏しても金回りがよくなっても、
一途に伴蔵を愛するがゆえの悲劇が心にしみる。
伴蔵の染五郎も、
終盤「どこで」糟糠の妻であり同士でもあるお峰に殺意を抱いたか、
そこをはっきりとわからせる。
序盤で二人の仲の良さが際立っていただけに、
多少の浮気はしても最後は「やっぱりお峰だ」と言ったその言葉に
「そのときは」ウソはなかった、伴蔵も根っからの悪ではないのだ、
という解釈は無理がなくてよかったと思う。
最後の修羅場も、先日亀治郎とやった「油地獄」のときよりずっと真に迫り、
非常に引き込まれた。
七之助の熱演に、染五郎も応えて相乗効果、バランスもよく絵になった。
ただし二人とも新三郎とお露の場面がだれた。
早変りに神経がまわりすぎて、人物造形が浅い。
一人二役のために、新三郎と伴蔵の対話場面は削られている。
円朝その他による説明セリフですべてを察するしかないが、
二人がどんなに愛し合っているかがほとんど伝わってこなかった。
もう一つのカップル、お国と源次郎。
亀鶴の源次郎は精彩を欠き、私は亀鶴のファンだが、
これは最近になくいただけなかった。
人妻のお国が人生を賭けるほど愛する男としての魅力に欠けている。
ダメンズだったとしても、ダメンズの色気を出さねばならないと思う。
吉弥のお国がよかっただけに、もったいなかった。
その亀鶴が真骨頂を見せたのが、「高杯」。
メインは勘太郎だけれど、
高足売りの亀鶴がメリハリのある動きと口あとで見せた。
勘太郎も最近身についてきたコメディセンスが大爆発で、
体のしなりをうまく利かせ、豪快に踊ってはみせたが、
いかんせん「タカタカ・タカタカ・タッタカタ!」と
ゲタの足で音楽的にタップを刻む最高の見せ場がいけない。
コレを見ると、
やっぱり勘三郎っていうのはすごいんだなあ、と
逆に歌舞伎座で見た「高杯」の素晴らしさに思いが至る。
勘三郎が「ざまぁ見ろ! まだまだ負けねえぞ。修業修業!」と
ほくほく顔でにらみつけている顔が目に浮かぶ。
今回、目を引いたのは坂東新悟だ。
お国と源次郎によって殺された女中お竹とその妹お梅を演じたが、
少し大人になって、女形としてひと皮むけた感がある。
セリフまわりやちょっとしたシナの作り方も上品だし、
何より声がよくなった。
芝のぶに続き、梅枝と肩を並べる若手女形へと成長してほしい。
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