『F』は怪我のため、一時帰国した「英国ロイヤルバレエ団のプリンシパル」をめぐるお話(1998)。
「ガメラ」を復活させた金子修介監督が、バレエ好きな奥様のご縁で手がけています。
おじいちゃん譲りで機械いじりの好きな女の子・ヒカルが羽田美智子、
彼女の幼なじみで、ちょっと気弱な青年・章吾に野村宏伸、
羽田の親友で、子持ち・出戻りの女性・有加が村上里佳子。
熊川演じるバレエダンサー・古瀬郁矢のマネージャーに戸田奈穂。
先ごろ亡くなってしまった鷺沢萌さんの短編小説『F』の
「落第生は『F』(A、B、C・・・とランクがあって)」というのをモチーフにしていますが、
それ以外に原作に準じた部分はほとんどありません。
熊川哲也を映画に出す、というのが、メインテーマ。
だから、熊川のために作られた映画と言っていい。
その上、その前に作られた「大統領のクリスマスツリー」という映画の続編として、というカセもあり、
金子監督、苦労したと思います。
熊川ファンとしての見所は、
まず第一に、これをミハイル・バリシニコフの『ホワイト・ナイツ』と見比べることでしょうか。
映画の格は、そのテーマ性からいっても比較になりませんが、
熊川がいかにミーシャを意識してこの映画に臨んだかがよくわかると思います。
それから、ラジオのDJをやるところがある。
(クラブのDJと違います。若い方のために。念のため)
バレエダンサーが声だけの演技をするって、どんな感じだろう??
ちょっと不安に思っていたけれど、このシーン、とても素敵です。
彼は後にバレエ音楽のCDを出し、そこに日本語、英語でナレーションをつけますが、
自分の声や語りの魅力に気づいたのは、この映画でDJをやった時じゃないかな。
どちらかというと、DJ部分は「熊川哲也」本人の地で、
他のシーンは演技で「古瀬」という男になっていた、
という感じです。
ちなみに、映画の終盤、古瀬は自分の復帰ステージに、ヒカルと章吾を招待する。
そのロケはパルテノン多摩で行われ、
バレエ誌にもその観客役エキストラ募集の記事が載り、応募して行ってきました。
観客席でたまたま隣り合わせた方は、以前ロンドンに住んでいたということで、
「私は日本に帰ってから彼のバレエは見てないんだけど、
ロンドンでは、時々オニギリなんか差し入れたりしてたんですよ。
こんなに大きくなっちゃってー」とお話しされていました。
彼女は、『シンデレラ』の道化役とかをご覧になった由、うらやましー、と思ったものです。
参加したおかげで、後ろ姿がちょこっと映っている私。
金子監督と少しお話できたのも、今はいい思い出です。
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「F-エフ-」
- 熊川哲也とKバレエカンパニー
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