きのう、東京・渋谷のオーチャードホールに
Kバレエの公演を観にに行ってきた。
熊川哲也復帰の「放蕩息子」と、
「ピーターラビットと仲間たち」の二本立てである。
「ピーターラビット」のほうは、
予想以上の面白さと出来のよさで、
最後の最後、カーテンコールまで含め楽しさ満載だった。
顔は見えないが、
表現力でどのダンサーも持ち味を発揮。
特に、清水健太、樋口ゆり、神戸里奈、ビャンバ・バットボルト、石黒善大が光った。
そして
もっとも素晴らしかったのが、オーケストラである。
井田勝大がタクトを振った「放蕩息子」も悪くなかったのだが、
福田一雄が指揮した「ピーターラビット」は絶品!
最初の一音から、たっぷりした開放弦の明るい音で、
今までのシアターオーケストラトウキョウと同じオケとはにわかに信じられない好演奏!
この「ピーターラビット」、
ジゼルや白鳥やドンキや、いろいろな定番音楽のモチーフが
ひょこひょこ顔を出すのだが、
どのフレーズにも旋律に物語と緊張感が漂って、心動かされた。
「放蕩息子」については、
正直、Kバレエで初めてやったときの衝撃度にははるかに及ばなかった。
熊川も、舞台の上には立ったものの、
力強さは半減。
セイレーン役も、浅川紫織も
長身で、アンドロイドのような無機質さ・残酷さ・妖しい魅力をたたえていた
中村祥子(SHOKO)に比べると、
特別なオーラが感じられず、
単に「よく踊っている女性」としか思えない。
父親役のルーク・ヘイドンも、
以前のような鋼(はがね)のような父権の強さは見られず、
最後の抱擁も、平凡。
すべてにおいて「小粒」な気がした。
しかし。
足が動かなくなって、杖をつき、いざるように進む熊川の姿は、
息をのむほど真に迫っていた。
考えてみれば、
足の怪我からの復帰第一弾の演目として、
「歩けなくなる」人物を踊る、というのは
これは単なる偶然なんだろうか。
昨夜は、踊る熊川ではなく、いざる熊川から目が離せなかった。
さきほど「力強さが半減」と書かせてもらったけれど、
踊り、という点でなく、
彼の周りにあった硬質なバリアーがなかった、という意味でも、
初めて見る熊川、という感じがした。
まるはだか。
すべてをさらけ出して無防備な姿。
彼はまた、未知の段階に足を踏み入れたのかもしれない。
実は、
パンフレットを読んでいて、そんな感触をさらに強くし、
私は急遽28日昼の、橋本直樹主演の公演も見ることにした。
同じ「放蕩息子」を
若い橋本と、出産後復帰した康村和恵がどのように踊るのか、
どうしても比べてみたくなったのだ。
また、今回は2階席だったが、次は1階。
そのあたりの見え方の違いも楽しみたい。
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「放蕩息子」「ピーターラビットと仲間たち」@Kバレエ
- 熊川哲也とKバレエカンパニー
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