久々、堪能させていただきました!
ジュリエットのロベルタ・マルケスは初演DVDでもタイトル・ロールを踊り、
非常に好評だったことから、
そのときは康村さんの回を観た私は一度ロベルタのジュリエットを観たいと思っていた。
顔、小さ!
ていうか、体も小さくって、
キャピュレットのキャシディと並ぶと、ほんとに親子みたいたった!
少女らしさを本当にうまく表現していた。
もちろん技術は申し分なく、そのバランス感覚のよさと機敏さは
さすが一流のプリマぶりでした。
それとともに、薬を飲むところでは、
クラシック(だよね?それほど古くないけど)の一場面でありながら、
一瞬コンテンポラリーか?っていう動きをした。
私は康村さんのジュリエットがとても好きだったし、
特にティボルトが殺されてから先、
「もう私にはあなたしかいない、あなたがいなくなったら私は結婚させられる!」っていう
鬼気迫る求め方に
家を捨てて仇を愛する女の覚悟が見えて説得力があった。
マイムの一つひとつに「セリフ」が見えた。
それに比べると、
ロベルタは論理やストーリーで押すのではなく、
ダンサーとして踊りで表現することに長けていたと思う。
体中から愛があふれている。
愛することの喜びが、そして悲しみが、体中から押し出されてくる。
愛しか、なかった。
それは熊川哲也のロミオも同じだ。
最初から最後まで、ロミオはジュリエットに首ったけだ。
ベターハーフに出会ってしまったからには、ほかに何が大事だというのだ?
みつめあい、視線を外さず全速力ですれ違い、立ち止まってまたみつめあい。
ものすごいスピードでコマのように回転するときも、
高く雄々しくジャンプするときも、
「好きだ!」の気持ちに天まで昇る興奮が伝わってくる。
バルコニーのパ・ド・ドゥでは
もうこれ以上ないくらい全速力のパワーで踊りまくる二人。
それはすでに「語らい」ではなく、肉感的に求めあうさまなのだ。
離れられない。
出会ったその瞬間から、二人はその運命の稲妻を受けた。
リクツじゃない。
はじけるような青春の疾走感は
舞台全体を覆っていた。
コールドたちもよくそろい、生き生きとヴェローナの広場で踊った。
マキューシオの橋本直樹は、初演に勝るとも劣らぬ活躍ぶり。
彼の「いっちょあがり!」的な軽快さとジャンプにおける浮遊感は、
師匠の熊川をほうふつとさせるところから、
そろそろ橋本直樹本人のオリジナリティとして定着しつつある。
表現力も技術もあり、どんな役でもこなせるところが逸材だと感じさせる。
初回に比べて断トツに力をつけたのが、ベンヴぉーリオの伊坂文月。
テクニックの正確さ、力強さ、そして、
おとなしめだった彼が、キャラクターをしっかり作りこんで役を生きることができるようになった。
ゼスチャーも顔の表情もはっきりして、セリフが聞こえるようだった。
熊川、橋本、伊坂によるメールダンスは非常にバランスがよく切れもスピード感もあり、
音楽とも調和していつまでも見ていたかった。
伊坂はソロで踊るときにも見劣りせず、長丁場でも息ひとつ乱さず、
常に大きな拍手をもらったのもむべなるかな。
浅川詩織のロザリンダもよかった。
私は松岡梨絵よりこちらが好み。
ロザリンダは恋を遊ぶマダムではあるけれど、娼婦ではない。
そのあたりの貴族的な雰囲気は、浅川のほうがあったような気がする。
序盤でティボルト(遅沢佑介)とのひそかな関係をきちんと見せたこともあって
ロザリンダの立ち位置もはっきりした。
ティボルトの遅沢もよかったけれど、
ちょっとひきょう者っていうか器の小さい男になってしまって、そこが残念。
キャピュレット家はジュリエットが一人娘でパリスと結婚するわけだけど、
婿養子じゃないだろうから次の世代はティボルトがキャピュレット家を背負うわけでしょ。
そういう矜持というか、それなりの育ち方してると思うんだよね。
つまり、
ロミオは家を継ぐべき生まれなのに無自覚だから、家より恋に走ってしまうのだけど、
ティボルトは直系でないのに家を継ぐかもしれない立ち位置にある。
だからロザリンダのことが好きだけどそれは内緒の恋だし、
のんだくれて喧嘩っ早くて人を見下すところがあっても「誇り」と「責任」は失わない。
そういう感じがほしかったな~。
たとえは悪いかもしれないけど、
市川海老蔵ってほんとに手に負えないところあるけど、
舞台に立つと「さすが御曹司」っていうオーラを放つわけね。
この人、やっぱりすごいっていう、人を味方にしちゃうような魅力。
そういう瞬間が見たかった。
私、ティボルトに入れ込みすぎ?
とにかく、
最初から最後まで、見どころ満載でした。
オーケストラも、序曲はテンポが乱れて「おいおい」と思ったけど、
ダンサーが出てきてからは彼らのダンスに触発されたか、ノリノリ。
相乗効果で非常によかったと思う。
しっかし、
Kバレエのダンサーはよく踊る。
止まってません。
熊川の振付は、容赦ないです。
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Kバレエ「ロミオとジュリエット」@東京文化会館
- 熊川哲也とKバレエカンパニー
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