Kバレエ「白鳥の湖」を中村/遅沢で観ました。
Kバレエは10月の「カルメン」を観られなかったので、久々です。
全体の感想としては、
休憩以降の三幕、四幕は良かったが、一幕はまだエンジンかかっていないように感じました。
きっとすごいだろうとワクワクしていた井澤諒のベンノは、思ったほどのはじけ方がなく、
ダンス以外のところではコミカルなベンノを演じたものの取ってつけたような演技で
この前の益子倭みたいにはいかなかった。
ただし、井澤ベンノ、第三幕冒頭のソロは素晴らしかったので付け加えておきます。
神戸/池本/佐々部のパ・ド・トロワにも期待していたんですが、
そりゃあ祥真くんの長い脚は魅力的だったけど、
コーダで三人が競うように踊り、厚みを感じさせるというところまではいかなかった。
次々と覆いかぶさってくるような迫力というか意気を感じられなかった。
一幕はトロワがよくないとおなか一杯になりません。
トロワに限らず、
みんなテクニックはあるし、丁寧だし、きれいなのよ。でも、熱が感じられない。
たたみかけるようなエネルギー、圧倒されるような力がないの。
二幕は白鳥のコールドが素晴らしかった!
特に、冒頭の、王子の友だちに射抜かれそうになるところ。
今まで感じたことがなかったけど、
白鳥が群れで止まっていて、なんとなく危険を感じてそちらを向きながら微動だにしない。
そこに二羽、また二羽、と飛んできては止まる。
頭上に挙げてしなだれた腕が、白鳥の首のカーブだっていうことに、初めて気づかされた。
そのくらい「白鳥の群れ」を感じたの。
その後もコールドは顔の上げ下げまでよく揃って、気持ちがよかったです。
中村祥子のオデットは凄かった。
さすが一流のプリマ。
でも、オーケストラがものすごくスロウで、
それはもしかしたら祥子さんのリクエストだったかもしれないけれど、
スロウすぎた感あり。こちらの気持ちが続いていかない。
遅沢君があまりに無表情なので、それも含めて物語に熱がなかった。
王子とオデットはあっという間にどんどん恋の深みにはまっていくはずだけど、
後半オデットはけっこう王子にしなだれかかるんだけど、
遅沢王子は草食系なのよねー。
休憩をはさんで、三幕はとっても充実していました。
キャラクターダンスでは、
チャルダッシュとスパニッシュがきびきびして特によかったです。
みんなヒゲとか仮面とかつけてるので誰が誰だかよくわからないんだけど、
チャルダッシュの兼城くん、益子くん、
スペインの石橋くん、栗山くんはわかった(と思う)。
祥子さんのオディールは、妖艶でいよいよ魅力的。
遅沢君も、オディールとのほうが楽しそう。
まあ、もちろん「やっと来てくれた!」んだから当たり前だけどね。
遅沢王子のソロもよかったです。
王子はこのソロが白眉でした。
で、
オディールに愛を誓った途端に振られたら、
今までの能面王子がウソのように、彼は激しく歎き苦しんだんです。
それで、私はちょっと理解した。
王子はずっと母である王妃に心も生活も支配されていて、
王子はこの舞踏会で、
「ボクはママの言われたとおりには結婚しない、好きな人と結婚するんだ!」って
初めて王妃に公衆の面前でたてついたのね。
それで、きっとすっきりしたんだと思う。
だからオディールとはとても解放された気分で楽しく踊れたのよ、きっと。
そして振られたときもマックス気持ちを外に出して嘆くことができたのよ。
でも時既に遅し。
四幕で、オデットは、自分以外の人に愛を誓った王子を断固許さないの。
二幕では、あんなに王子を求めて体をまかせていたのに、
四幕では、王子が差し伸べる手を拒否。「一緒に行こう」の誘いも拒否。
「いいえ、私は、もう死んじゃう!」の一点張り。
踊っても踊っても、もうオデットの心の中に王子はいないのまるわかり。
歎いているんだけど、オデットはすでに自分の行く末に絶望して歎いているだけ。
でも、王子には、それがわからないのよね。まだ修復できると思ってる。
ロットバルトと戦っても、王子はやっつけられちゃうの。
そしてオデットは、今まで自分を縛ってきたロットバルトにもう決して支配されまいと、
死を選ぶのです。
湖に向かって、まっしぐら。
王子のことなんか、全然眼中にないみたいに、まったく後ろを振り返らず・・・。
そして王子も、後に続きます。
・・・いつもなら感動的な幕切れなんですけど、
今回は、破れかぶれの後追い自殺のように見えてしまいました。
オデットはロットバルトから、王子は王妃から、
「その支配からの、卒業~」をしたかったのかもしれない。
そんなマグマがたまりにたまっていたときに、2人は出会った。
だから、
その恋は自立への起爆剤でしかなかったのかもしれない。
そんなことを考えました。
最後にオデットと王子はあの世で結ばれるんですが、
この二人、うまくいくんでしょうか。
成田離婚ならぬ「あの世離婚」しないといいな、と思います。
心の鬱屈から解き放たれた王子は、
きっとオデットを素直にオープンに愛することができるでしょう。
そのことを祈りつつ。
追記
あと、王妃様とかの衣裳、胸が開き過ぎ、胸を寄せ過ぎ、谷間作り過ぎ!
そこに目がいってしまうよ、あなた。女性の私でも。
そこまでしなくても、皆さん、とっても魅力的ですよ。
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Kバレエ「白鳥の湖」(中村/遅沢)@東京文化会館
- 熊川哲也とKバレエカンパニー
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