今やミュージカルの大御所、
アンドリューロイド・ウェーバーとテイム・ライスのコンビは、
「ジーザス・クライスト・スーパースター」から始まりました。
出世作にして、完璧。
彼らのすべての作品のモチーフはここにあります。
テーマはずばり、「キリストの最後の7日間」。
「パッション」や「ダビンチ・コード」も真っ青の、聖書に対する新解釈であり、
ミュージカルというジャンルを越えて世界に風雲を巻き起こし、
以降の時代に拭い去れないほどの影響を与えました。
まずは1970年、ロック・アルバムが作成され、
翌71年、ロック・オペラとしてニューヨークで上演されます。
72年にはロンドン、
73年、日本では劇団四季が早くも日本で初演を果たしています。
その73年にできたのが、ノーマン・ジュイソン監督の映画です。
この監督は、「屋根の上のバイオリン弾き」の監督としても有名です。
日本での封切りは、翌74年でした。
映画はロック・オペラのすべてを完全パッケージにして、見劣りすることがありません。
その上、劇場では絶対できないことを敢行したのです。
それは、イスラエルでのロケ。
灼熱のナゲブ砂漠の向こうから、1台のバスがやってくる。
降りてきたのは、70年代風の若者たち。
「序曲overture」にのって、大道具小道具らしい荷物を次々に運び出し、
最後に大きな十字架を立てると、
そこにテッド・ニーリー演ずるイエス・キリストが、湧いて出たように現れる…。
このイントロを見れば、
もはやいかなる人も、これから始まる物語から逃れることができません。
常に「裏切り者」というレッテルで語られてきたユダ、
キリスト磔(はりつけ)を命じた「極悪人」ピラト、
彼らの内心の動きを、この物語はこまやかに描きます。
そして、キリスト自身の弱さ、人間臭さ、そして逡巡までも。
残念ながら、イチオシの1973年版映画は、VHSの製造が終了しているとのこと。
でも大丈夫。
きっと、あなたが初めて出会った「ジーザス」が、
あなたにとっての「イチオシ」になるはず。
なぜなら、「ジーザス」の魅力はすべて、
ティムの書いたリリック(歌詞)と、アンドリューの最高の音楽の中にあるから。
だから、映画であってもミュージカルであっても、どういうバージョンであっても、
このミュージカルから受ける衝撃の本質は、不変なのです。
劇団四季では、スタンダードな「ドラマティックversion」と
日本の衣装や歌舞伎メイクを駆使した「エキゾティックversion」があります。
隈取をしたヘロデ役の市村正親が、大八車に足をかけて撮ったポスターは有名ですね。
私が「ドラマティック」(キリスト役は若き日の山口祐一郎)を観たのは1987年です。
当時は、まだ「見比べる」という文化を知らず、またお金もなかったのですが、
「エキゾティック」も見ておくべきだったと後悔しています。
これから観る人へのアドバイス。
すべて、観るべし。何度も、観るべし。
できれば、英語のリリックを堪能してください。
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「ジーザスクライストスーパースター」
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