私はヴィクトル・ユゴーの「ノートルダム・ド・パリ」がとても好き。
だから、
バレエでもアニメでも演劇でもミュージカルでも映画でも、
この名のつくものはかたっぱしから観ている。
で、今回も行ってまいりました。
以下、あらすじその他まったく言及せず、
単なる感想です。すみません。
(思い入れ強すぎる作品なので、書きだすと、非常に長くなる懸念があるため)
正直言って、前半はまったくつくりが雑で、ちっとも楽しめなかったのだが、
後半から楽曲も素晴らしいものが続き、ぐいぐい引っ張られた。
前半が散漫だったのは、
複雑なあらすじを全部入れ込んで進もうとしたことにも一因がある。
衣裳も難あり。
フィーバスは兵士(警備隊)なのに、クロパンたち町のホームレスみたいな人と同じ。
これ、わかりにくすぎる。
(西洋人の顔、東洋人にはみな同じに見えますので~。
こういうところ、蜷川さんが「赤」「青」「黄色」みたいにするの、親切だと思った)
もう一つ、エスメラルダが魅力に欠けた。アレサンドラ・フェラーリ。
踊り子の役なんだけど、踊りが下手。ていうか、あの振付なんだ?? 体くねらせてるだけ。
この踊りを教会の塔の上から見た司教のフロロが神様捨てて彼女に首ったけになるの、
ちょっと想像つかない。
あれくらいの踊りだったら町の娼婦で十分。でもエスメラルダは踊り子。
運命の出会いには思えなかった。
その上、歌もいまいちだった。
もちろん、リアルでは「ええ?あんな子のどこがいいの?」でも惚れる、
そういうことはある。
でも、これはミュージカル。
いつも言うことだけれど、オペラ歌手がどんなに肥っていても許されるのは、
「声美人」だから。
声が一番いい人が主人公だという認識が、観客にはある。
それは、ミュージカルでも同じだと思うのだ。
声に魅力がないと、感情移入できない。
声がよかったのは、フロロ役のロバート・マリアン。
前半終了間際の「ベル」あたりから、ぐんぐんのしてきて、
「ああ、これはフロロの物語なのね」と思わせた。
さすがである。
アクロバティックなダンスがとても評判だけれど、
ミュージカルとしての一体感はいまいちだったと思う。
どちらかというと、「シルク・ド・ソレイユ」的な感じというか。
歌う人は歌う、踊る人は踊る。
それでどちらものけぞるほどすごければ拍手喝采だけど、
そこまでクォリティは高くなかった。
だけど、
観客は大熱狂だったんだよね~。
千秋楽ということもあったかもしれないが、
もう心の底からびっくりしちゃったのは、
カーテンコールでみんな写メしてたこと。これ、許されてたのかしら?
リピーターも多かったようなので、お墨付きなのかな~。
総立ちだったので、私も最後は立ちました。(前から4番目)
それで、グランゴワール役のリシャール・シャーレが、
アカペラ・フランス語で歌ってくれた。
これはよかった。
そこで思った。
これ、やっぱフランス語で聞かないと、本当のよさがわからないのでは?
英語がメロディのちゃんと乗ってないのでは?
日本のミュージカルでは、けっこう気を使って歌詞を乗せている。
英語、どうだったんだろう?
ロビーでは英語版のCDしかなかったので買ってきませんでした。
でも、
ほんとに2幕はいい歌が多かったな。
フィギュアスケートなどで使われているのもむべなるかな。
あと、
このミュージカルは原作にものすごく忠実でありながら、
「現在のフランス」に軸足を置き、
実際の騒動をベースにして
「サンパピエ(sans papier)=紙(滞在許可証)を持たない人」たちを描いている。
だから、カジモドもイノセントではなく
「なんで俺は醜くて貧しく、フィーバスはイケメンで金持ちなんだ、世の中不公平」と歌う。
そういう明確な意図があるから、
原作と違ってどうのこうのと細かいところに文句を言うつもりはない。
ただただ、エスメラルダがもっと歌がうまくて踊りがうまければ、
もっともっと楽しめただろう、と思うだけである。
男たちの重唱が非常に素晴らしかっただけに、とても残念。
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「ノートルダム・ド・パリ」@シアターオーブ
- ミュージカル・オペラ
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