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「リトルプリンス」

東京芸術劇場の第10回ミュージカル月間の最後を飾るのは、
Rカンパニーの「リトルプリンス」です。
「音楽座ミュージカル」がさらに進化するために作られたプロジェクトが「Rカンパニー」。
ワタクシ恥ずかしながら、「音楽座ミュージカル」のミュージカルを初めて見ました。
「アイ・ラブ・坊ちゃん」などで土居裕子さんが、
「マドモアゼル・モーツァルト」で新妻聖子さんが主演し、
数々の演劇の賞をとっている団体なのに。
昨日の夜の王子役は、野田久美子さん。
バラの花役は、秋本みな子さん。
2人とも劇団四季でも活躍した実力者です。
この2人の透き通るような、そして艶のある、天から降ってくる光のような力強い声が
それだけで観客を酔わせました。
「やばいよ、オレ、あのバラの歌聞いただけで泣きそうになっちまった!」
「感動っていうのと、ちがうんだよね。ただ、声を聞いただけで体が震えちゃって…」
幕間のロビーで聞こえてきた、若い男女の会話。
うん、うん。そうだね。
「声」が、本能で私たちの本能を刺激しているんだね。
二幕の最初は「ヘビ」のおでまし。
山合大輔さんは頭を下にして、上から垂れ下がった1本のロープを伝い、
スルスルと、ヌラヌラと、降りてきます。
その身体表現の素晴らしさ。
「声」の次は「体」なのです。
同じ日の朝、ちょど森山開次くんのインタビュー番組をTVで見ていたので、
いわゆるコンテンポラリー・ダンスの体の使い方が、とても似てるな、と思いました。
何も語らず、砂漠を這うヘビを表す山合さんに、LOVE!
他でも踊っているのかな、と思ったら、この音楽座でだけ、ということ。
実際に並んでみると、私と身長もそんなに変わらず、小柄。
舞台では堂々たる体躯に見えたから、やはりすごい人だ。
キャストの素晴らしさから入ってしまったけれど、
舞台美術もよかった。
満点の星空をバックに、砂丘を表す丘の骨組みとその上にかけた一枚の布。
この「布」と「骨組み」だけでやってのける舞台転換が見事。
照明によって「布」赤茶ければ砂丘、空に上がって青くなればそれは宇宙だったりする。
骨組みの中から、そして背後からやってくる、さまざまな星の住人達。
もっともひきつけれられた所は、「キツネ」との対話かな。
「飼い慣らされてる」とはどういうことか。
「友だち」とはどういうことか。
友情を育むには、時間がかかるってこと。
友情を結ぶと、人は安心して冒険に出られるってこと。
でも、友とは別れなければならないこと。
別れても、友だちだよってこと。
有名な「本当に大事なことは、目には見えないんだよ」というセリフも、
今まではキツネが「わけ知り」のようにしか感じられなくて、
ただのお説教オヤジかと思っていたが、
友だちがほしくてほしくてたまらないキツネが、
ちょっとずつちょっとずつ心を開いて王子と友だちになったのに、
その王子がいなくなってしまうという衝撃。
それでも必死になって友情にこたえようとしている、
そのキツネの心情に、感動。
当夜のキツネは安中淳也さん。よかった!
バラと王子と、飛行士とのやりとりも心が痛かった。
「わがままだ」という飛行士に
「それは、あなたが私を愛していないから」。
今まで、この「バラ」ってただの高慢ちきな女としか思えなかったけど、
初めて「待つ女」の哀しみを感じた。
男はすぐに行ってしまう。冒険に。野心を抱いて。外に、外に。
(私はどうなるの?)
(私を見て!)
(私を置いていかないで!)
すがりたいけど、プライドが許さない。
「行きたいなら、行っちゃえば?」
ツンとすまして横向いて、心ならずもスネてしまった、それがお別れのあいさつになる。
言葉を額面どおりにしか受け取れない男たちは、
モヤモヤしたまま背中を見せて、旅に出る。
飛行士役の広田勇二さんが、心にいっぱい寂しさを抱えた強がり男を好演していた。
「はかない」と「かけがえのない」を理解し自分にとって大切なものをつかむまでには
長~い時間と、遠いところへの「旅」が必要なんだってことを、
王子はいつの間にか気づく。
初め「少年」だった王子は舞台の終盤、少し大人になっているように感じた。
王子が、自分の星に帰る、その帰り方がまた切ない。
ここでも山合ヘビが、朗々とした声で王子を未知の世界へと誘う。
カッコイイ!
私は、そろそろ50年生きているわけだけれど、
初めて、「星の王子様」の深ーいところに心が触れ、感動しました。
王子とともに、
飛行士とともに、
「長~い時間」とここまでの「旅」が必要だったのかもしれません。
相川レイ子を中心としたRカンパニーの「ワームホールプロジェクト」つまり、
みんなであーでもないこーでもないと議論しながら作り上げたこの舞台。
珠玉です。
体が昇華されていきます。
これといった大物人気俳優が出ているわけではないけれど、
あふれる感動が感動を呼び、
多くの観客がスタンディングで拍手していました。
上演中も、あちこちですすり泣きが聞かれた。
みんな感性が鋭い!
涙もろい私ですが、「星の王子様」初衝撃だったこともあり、
今回はちょっと出遅れました。
感動しなかったってことじゃありませんよ。
熱くなった胸をそっと抱きしめた…っていう感じ。
舞台が終わると、キャストは扮装のままロビーに!
気さくにサインや写真撮影に応じていました。
(その時に、私も山合さんとお話が少し出来たんです)
2008都民芸術フェスティバルの一貫でもあるこの「リトルプリンス」は、
パンフレットも無料で配っています。
今日と明日でおしまいなので、
「星の王子様」好きな人も、触れたことのない人も、
ぜひぜひ、ご覧ください。
子どもにも、大人にも、感動のひとときです。
(王子、花、キツネ、ヘビなど多くの役がダブルキャストになっています。
 ただ、花を除いて、今回はほとんど固定のようですね。
 詳しくはHPをご覧ください)

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