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ミュージカル・キャバレーショー「Enjoy! Toshi Cappuccino」

Toshi Cappuccinoさんは、ニューヨーク在住の演劇評論家&プロデューサー。
師匠が彼と知り合いということもあって、
彼の「キャバレーショー」を観に行くことにしました。
平日の夜遅く、新宿歌舞伎町のお店で22:30から始まるショウというのに、
地下のお店(MARS)へ通じる階段は、建物の外まで行列が…!
お客を全員中に入れ、少し遅れてショウが始まったときには、
店内は満員。
前日のtoshiさんのブログに書いてあったとおり、席数の3倍の人数は優に超えていましたね。
ショーはtoshiさんの今までを振り返る形でMCが進行、
その人生模様にふさわしい内容の曲を歌っていく、という流れでした。
久しぶりの大音量ライブ。
間近で体験するライブは、重低音が五臓六腑にしみわたる、といった感じ。
10歳の時から「のど自慢大会」荒らしだったというtoshiさん、
本場ニューヨークのミュージカルのオーディションも受けまくっていたとか。
声量たっぷり。音域も広く、並の歌手よりずーっと上手かった!
(時々、緊張からか、声、うわずってましたが)
歌も堪能したけれども、
toshiさんのお話がまたステキで。
彼はgayで、今はそのことを公表して生きています。
そんな彼にも、今ほどしっかりと自分と向き合えなかった日々がありました。
「中学の時、自殺しようと思ったこともあったの。
…今じゃ考えられないでしょ? このヒラキナオリの人生!!」
20年以上前、
「ゴールデンタイムのテレビにおネエキャラが出るなんて、ありえなかった」時代。
同じような気持ちを持っている人がこの世にいることもわからなかった日々。
その時、命を絶たなくて、本当によかった。
「昔、自殺を考えたことがある」という言葉は最近、
人の共感を得たかったり、慰められたかったりして使うような場面が多くなっている気がするけど、
toshiさんの言葉は、今八方ふさがりになっている人への、温かいエールに聞こえました。
歌手をめざして東京にやってきたものの、挫折するくだりにも感動した。
「舞台に立つということは、自分をすべてさらけ出すこと。だからこそお客様は感動する。
でも、当時の私は、それができなかった」
自分を表現することができず、歌手をあきらめ地元に帰ったといいます。
ツルツル頭で中年のオジサマが歌っているだけなのに、
その顔がとても美しく見えるのはなぜなんだろう、と思っていました。
それは
「自分をさらけ出している」からなんだな、
その覚悟が清清しさをかもし出すんだな、と気づきました。
人間、
自分が自分を受け入れられない、という段階から
自分では自分を認められる、愛せる、という段階へ移行できたとき、
人生が格段に違ってくるけれど、
さらに大きいのが
それを「自分で人に言えるか」ということ。
前にマイノリティの人のインタビューをしたことがあります。
「今日はその話には触れないで」と言われました。
純粋に職業のことを聞いてくれ、と。
私もそのつもりで行ったので、インタビュー自体はうまくいったんですが、
原稿をまとめる段になり、
「まったく触れない」ことの矛盾につきあたりました。
人がひとまわり大きくなるとき、
脱ぎ捨てた自分のカラはどんな形をしていたか、
今大事にしているものが何なのか、
一番触れてほしくないものは、一番大事なものでもあるわけで。
それを抜きにしてその人を語るのは、とても難しいと感じました。
その人が、今どうしてこんなに輝いているのか、
「触れ方」にはいろいろあるけれど、
「まったく触れない」は不自然だった、と思います。
結局、読者に予備知識があることを前提に『におわせる』しかない。
しかし、
それは逆効果ではないのか? かえって憶測を呼ぶのではないか?
いろいろ考えさせられた取材でした。
「人がそのことについてどう言おうと、それはかまわないけど、
自分から話すのは辛い」とその人は言っていました。
toshiさんにも、きっとそういう時代があって、
そして今、
「自分で自分を語る」言葉を持てる時代になったんだろうな。
過去の恋愛から何を学んだか。
それが今の自分にどう生かされているか。
現在最高のパートナーと幸せに暮らしているからこそ、
その安定感がさらに笑顔を輝かせているのかもしれません。
初めてニューヨークに行った時、
男と男が街中で手をつなぎ、仲よさそうに歩いているのを見、
たくさんのゲイ・バーがあると知ったときは、
「生きながら、天国(パラダイス)に来たのかと思うほど感激した」そうです。
それは、ティファニーで買い物できた!とか、そういう「感激」とはまったく比べ物にならない、
本当に素晴らしい感覚だった、と。
それだけ、抑圧されていたことの、裏返しだった、と。
苦しかった中学、高校時代のことは、彼はあまり覚えていないと言います。
でも、今は最高に幸せな人生を歩んでいる。
「言いたいのは、人は変わる、変われるということ。
そしてそれは、だれにも止められない、ということ」
もし、「苦労して自分を受け入れる」ことなど必要ない人生だったら、
歌の才能だけを信じて「歌手」への道を突っ走っていただろう。
回り道して、回り道して、
ようやくつかんだ「歌手としての自分」。
約1時間のステージの最後は「One Night Only」。
この日がToshi Cappuccinoとしての日本最初のステージだったこともあいまって、
深く心に沁みました。
たった1時間のステージで、観客全員を自分の味方にしちゃうその構成たるや、
さすがプロデューサー!
そして、やっぱりお人柄かな?
まさか、彼が泣いてしまうなんて思わなかった。
本当に、心のすべてをさらけ出してくれたんですね。
開場が押した分だけお開きも伸びて、
家にたどり着けるかドキドキでしたが、
何とか深夜バスに乗ることができ、午前2時前に帰宅。
しかし、0時をまわった歌舞伎町でタクシー拾う自分って、
あんまり想像したことありませんでした。
ああ、
濃~い一日。
まだ体の奥で、重低音がズシズシとリフレインしています。
ほぼ同じ内容で行われたNY公演のもようはこちらで楽しめます。

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