素晴らしいコンサートだった。
2部構成で
1部は「モーツァルト!」「エリザベート!」「ルドルフ」「ミス・サイゴン」
「シェルブールの雨傘」「ミー&マイガール」「ウェディング・シンガー」など、
今まで出演してきたミュージカルの名場面を綴るようになっている。
2部はシャンソンやジャズ、ポップスまで幅広く織り交ぜて歌い、
途中日替わりゲストが登場する。
一番感じたのは、
モーツアルトはもう彼の肌に刻まれて一体化しているんだな、ということ。
ルドルフも、「エリザベート!」「ルドルフ」と違う作品で演じたことにより、
ルドルフとしての生き方が曲から立ちのぼってくる。
「シェルブールの雨傘」の歌をしっとりとしかし力強く歌ったのもよかった。
2部でもっとも光ったのは「組曲虐殺」から「独房からのラブソング」で
音楽監督を兼ねる島健のピアノも冴えわたり、
震えがくるほど小林多喜二の気持ちが伝わってきながら、
高い音楽性を実現して白眉。
井上ひさしの「音楽劇」をここまで「ミュージカル」に仕上げたのは、
井上芳雄の実力と、井上ひさしさんへの敬愛とのなせる業と思った。
ゲストは島田歌穂。
彼女をコンスタンツェにして歌った「あなただけ愛す」には大満足でした!
でもその上を行ったのが
「オン・マイ・オウン」。
来年の「レ・ミゼラブル」オリジナルキャスト版の一場面を先取り、です!
現実の汚い街が闇のベールに覆い隠された深夜のパリを彷徨しながら、
マリウスから受ける愛を夢見るエポニーヌ、
それを「夢よ…」と否定し、現実を空しく受け入れるエポニーヌ。
声で、表情で、それを見事に伝える彼女の「オン・マイ・オウン」は、
誰のものよりやさしく、ゆったり、情熱的でありながら寂しい。
井上芳雄は日本語以外で歌う歌について、
歌詞の内容を簡潔に、しかし丁寧に観客に説明する。
歌の世界を大切にしていること、その中にあるドラマを感じながら歌っていることが
よくわかった。
不満は2曲だけ。
尾崎の「I Love You」は、ジャズアレンジに振り回されて、
一番大事な気持ちがおいてきぼりになってしまっていた。
アッキーが歌ったあまりに素晴らしい「I Love You」を知っているだけに、
この歌はもう少しがんばってほしいな。
あとは「Cry me a River」。
こちらは、昨夜のゲストである島田歌穂で、絶品の歌を聞いてしまった身としては、
「歌い終わったら歌穂さんが出てきて、もう一度歌いなおしてくれる???」などと
妄想までしてしまった。
井上くん、ドロドロな男女の愛は未経験?(笑)。
ぱっくり開いた心の傷からドクドクと血を流しながら、
憎しみのコートを着た裸の愛が男の首にまとわりつくような歌は、
まだ無理~みたいに感じました、ハイ。
私、
井上くんの舞台、本当にたくさん見てると思った。
そして、
見てきてよかったな、と思った。
これからも、注目していきたいと思います。
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井上芳雄10周年記念コンサート@青山劇場
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