バルタバスは、毎回趣向を変えて
パフォーマンスを作り上げてきます。
このところはインド、チベット、日本、と
非ヨーロッパ、アジアにテーマを求めていましたが、
今回の「バトゥータ」は、ルーマニアのロマの、
馬とともに新天地をめざして移動しながら生きるさまを
素朴に、ストレートに表しています。
そこには人馬の生活の根源があり、
生命の直接的な体温がみなぎっています。
そしてヨーロッパのキリスト文化にはよりエキゾチックに感じられる、
土着の魔力が渦巻きます。
トロットする馬の背中で、妖しく踊るジプシー女は、
まさしく「ノートルダム・ド・パリ」のエスメラルダに外なりません。
褐色のヴィーナスの
五感に迫る色香の前には
副司教クロード・フロロもイチコロだったろう、と
容易に想像できます。
ロマの放浪が
一面で悲哀に包まれていながら、
蔑まれ、おとしめられながら、
馬と戯れる彼らの底抜けの明るさには、
誰にも阻むことのできない
不可侵なる魂の自由が感じられます。
原点回帰。
バルタバスの言葉です。
造りこんだ物語ではなく、
歴史が証明している人間の強さ・自然の美しさを
まるごと体感する1時間半。
それが「バトゥータ」です。
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ジンガロの新作「バトゥータ」
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