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「アセンション日本」@紀伊國屋ホール

今起こっていることを演劇にする。
それは、けっこう難しいこと。
まだ世間の評価が定まっていない。
「コトの行方」も誰にも見えない。
それでも。
今、この熱い空気に冷凍窒素を吹きかけて、
今、この空気を熱いままに保存しておくこと。
それが、大切。
「アセンション日本」
3.11をきっかけに発生した福島第一原発の事故とその後を
さまざまな視点から描き出し、問いかける舞台です。
作・演出=上杉祥三
主人公は、
阪神大震災をきっかけにボランティア活動を続ける主婦・桜子(長野里美)。
そのとき知り合った原発作業員・田之倉(高木稟)の話に触発され、
原発反対運動もしてきた。
しかし桜子の夫・幹雄(天宮良)は、経産省に勤めるいわゆる「官僚」。
エリート路線を「当たり前」に進んできた幹雄は、
やさしくて穏やかな家庭人ではあるけれど、
妻の運動を「自分の仕事に支障ない程度にしてくれ」と思っている。
「結局、僕の稼ぎがなくちゃ、ボランティア活動もできないでしょ?」と。
いまだ出口の見つからないこの原発事故とともに、
私たちはこれからの日本をどう生きていくべきか。
今、いちばん大切なことは何か。
演じるものも、観るものも、一緒に知り、一緒に感じ、
一緒に悩み、一緒に考え、一緒に希望をもとうとする舞台である。
事故直後の地元警察の狼狽ぶりと
東京の霞が関や東電本店の鈍感さのコントラストにリアリティがある。
「反対」を叫ぶ人たちが、簡単にまるめこまれていく付和雷同気分にも。
その中で、「自分」を見つめ続ける努力のいかに大変なことか。
原発事故について、
日本の来し方行く末についての考察であるとともに、
夫婦や親子の愛情の物語である。
最近は、「原発離婚」などというコトバが飛び交うくらい、
家族の中での価値観の違いが浮き彫りになっている現状がある。
家族のために、がんばっているのに。
その一人ひとりの苦悩にも行き当たる。
大胆な神話解釈や、歴史に暗躍する秘密組織への言及もあり、
現実の重々しさを吹き飛ばすファンタジーもほどよく混在。
しかし単なる「荒唐無稽」とあなどっていると、
大事なものを見落としてしまうかもしれない。
「言霊(ことだま)」を投げる覚悟、というセリフが心に刺さる。
公演後のアフタートークには、
日替わりでゲストが登場。
私の観た7/23(土)は、前福島県知事の佐藤栄佐久市。
世の中、知らないことはたくさんある。
まず「知る」ことが、いかに自分の視野を広げるか、
人の意見を冷静にみつめる基準となるか、
思い知らされる。
佐藤氏の
「原発の大原則は自主、民主、公開。それがなければならない」から、
「自分で考えることが必要」「すべてが公開されることが必要」
という言葉にうなずいた。
アフタートークのゲスト、
これまでは
7/21(木)飯田哲也氏
7/22(金)保坂展人氏
7/23(土)佐藤栄佐久氏
これからは
7/24(日)山田厚史氏
7/25(月)河野太郎氏
7/26(火)浅川嘉富氏
「今」の目撃者となれ。東京・新宿東口、紀伊國屋ホールにて。
7/24(日)、7/26(火)は午後2時から、
7/25(月)は、午後7時から。

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