再演に再演を重ねているこの作品ですが、
私は初見。
サリエリに扮した松本幸四郎の見事さは、
「名もなき人々よ。私が赦す」という最後のセリフに
すべてを集約させているところ。
「才能」というものから見放されたと感じた人々、
どんなに努力しても、「あの人の才能にはかなわない」と
屈服する絶望を、無益な嫉妬心を、やるせなさを、
彼はなんとリアルに演じることだろう。
30年の歳月、その「前」と「後」とを
これまた鮮やかに、素早く、変身してみせる。
膨大なるセリフをひといきで喋り切っても
その朗々たる声ゆえにちっとも耳障りにならない。
すごい役者だとつくづく思う。
対する武田真治。
恐ろしいまでの天才を演じきるまでには至っていないが、
「何も考えてないのに、すごい」男になって突っ走った。
父親の影に怯え、しかし頼り切っている、
純な赤ん坊のような男の、イノセントゆえの転落を
甘えん坊アマデとして体現し、
特に終盤に見ごたえがあった。
内山理奈のコンスタンツェもかなり頑張ってはいたけれど、
最後まで「コンスタンツェってどんな人?」がよくわからなかった。
モーツァルトを愛していたのかいないのか。
ただ流されているだけなのか。
だとしたら、最後はどうして戻ってきたのか。
無知というには悪女っぽく、
悪女というには誠実で、
役作り、あとひと息っていう感じでした。
それにしても…。
あの「魔笛」がフリーメーソンの世界を描いたものだってこと、
今までまったく知りませんでした~。
すっごく有名な話らしいですね。
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