夜明け少し前。粗末な服のエレクトラ(寺島しのぶ)が、
囁くように、夜に呼びかける。
「暗い夜よ、黄金の星を育む夜よ、…(後略)」
ほとんどヒソヒソ話に近い声なのに、客席すべてに彼女の「声」は広がる。
一体どんな発声をしているのだろう?
彼女のエレクトラは完璧だった。
母クリュタイムネストラ(白石加代子)との対峙は、
娘の、母に対する強情がくっきりと描かれていて、
きっとすべての「娘」が共感したのではないだろうか。
「祈りを捧げさせておくれ」という母に「どうぞどうぞ」といいながら、
祈りの場所からどこうとせず、母の望みを妨げるエレクトラ。
戯曲にはセリフしかない。
この「譲らない」というしぐさは、彼女の発案か、蜷川か?
演劇が戯曲以上に雄弁であることを、
私はこの場面からおそわった。
数年後、蜷川演出・大竹しのぶ主演で「エレクトラ」が上演されましたが、
私は、この寺島しのぶのエレクトラが大好きなので、
印象を消されまいと、敢えて観に行きませんでした。
惜しかった、ような気もする。
しかし、私の中で、「エレクトラ」といえば、寺島しのぶなのです!
「グリークス」でのオレステスは菊之助。
しのぶ・菊之助は、実人生でも兄弟ですね。
もう6年前になりますが、彼は歌舞伎でもその他の演劇でも、成長しています。
この前は「犬神家の一族」に、富司純子・つまり実の母と、やはり親子役で出ていました。
・・・佐清(すけきよ)役、よかったっス。
大竹しのぶと共演したオレステス役は岡田准一、
昨年の「オレステス」でタイトル・ロールは藤原竜也。
この時のエレクトラは中嶋朋子です。
いろいろな「オレステス」「エレクトラ」があるけれど、
この二人の関係は、なかなか理解しにくい。
エレクトラの母憎し、父親恋しのエネルギーに、オレステスが巻き込まれていくという、
「グリークス」の関係が、もっともわかりやすかったように思います。
(すみません。大竹/岡田バージョンは未見なので、観た方、ご意見ください!)
*2006年7月10日のMixi日記をもとに、新しく書き加えました。
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