シェイクスピアの「ハムレット」、とにかく一度は、と読んではみたものの、
何だかよくわからないなー、と思った方。
多いと思います。
かくいう私も、中学2年生の時、「???」。
戯曲、という特殊な読み物であることもあり、
上演してナンボのものですから、
字面を読んだだけではわからないこと、たくさんあります。
ましてや、イギリス人の書いたデンマークの話。それも、昔の。
その頃の時代背景とか、生活習慣とか、王族の日常とか、国同士の思惑とか、
薄い舞台脚本だけですぐにピンとくるものではありません。
舞台を観て、映画を観て、「こういうことだったんだー!」という人も多いと思います。
そして、
それを小説でやってのけたのが、この大岡昇平著「ハムレット日記」です。
とても読みやすく、わかりやすいので、
ぜひ読んでみてください。
シェイクスピアの大名作を向こうにまわして、大岡先生、
「ハムレットの日記」という形で原作を裏読み。
25年かけて自分なりの「ハムレット」観をこの中にすべてぶち込みました。
いわば、物語の形をした「ハムレット論」。
戯曲がヒョイと跳び越えられる矛盾と矛盾の間の空白を、一つひとつ論理的に埋めていき、
「なーるほど、そういうことだったのね!」と思わずわかった気にさせる作品です。
ハムレットという王子は、本当に亡き父の亡霊を見たのか。
彼はどうして狂人のふりをしたのか。
オフィーリアのことは、愛していたのか。
そういった基本的な疑問から、
この話におけるフォーティンブラスの立ち位置や民衆感情など、
政治的な側面をきっちり物語りに取り入れ、
なるほどハムレットは「王子」だった、と思わせる
その論理性がすごい。
神を信じるか、幽霊を信じるか、それとも理性のみでこの世を生き通すか。
そういう部分も語られる。
私が「そうかー!」と思わず膝を打ったのは、
「ゴンザーゴー殺し」という芝居をやるところ。
叔父に見せつけてうろたえさせよう、という魂胆で上演させるのですが、
これ、最初に短い「無言劇」であらすじをなぞる。
その後、また始めに戻って同じことを普通の劇で今度はセリフをリアルに入れてやるのです。
どうして二回やるのか。
この「無言劇」がなぜ必要なのか、
それをちゃんと説明してくれるのだ。なるほどー!
戯曲より読みやすく、ハムレットにも感情移入しやすい。
大岡昇平にこの作品を書かせたのが、
ローレンス・オリヴィエ主演の映画「ハムレット」だったというから、
映画の力は偉大です!
名画DVD ハムレット VCDD-15
*「ハムレット日記」は岩波文庫の「野火・ハムレット日記」で読むことができます。
他に、大岡昇平全集(4)など。
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