「かもめ」について書く予定でしたが、
東京での千秋楽を明日に控えた「ハロルドとモード」を先に書かせていただきます。
あしからず。
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というのも、今日これを見て、ものすごく感動したので、
「どうしようかなー」と迷っている人は、
ぜひぜひ明日観に行ってもらいたい!と思ったからです。
19歳の男の子と79歳のおばあさんの恋、というふれこみだけを見ると、
なーんだかなー、と引いてしまいそうですが、
ものすごーく深い話でした。
19歳のハロルド(西島隆弘)は、メカに強くて実験好きで、
でもちょっと変わってる男の子。
ものすごくお金持ちのお坊ちゃんなんだけど、
周りと「一緒」に「フツー」のことをこなすことができない。
お父さんの亡き後、事業を切り盛りしているママ(杜けあき)は、
愛する一人息子の世話をなにくれとするのだけれど、
世の大方の母親と同じく、「ママのいうことを聞いていい子になって!」のタイプ。
息子は、もう19歳になるのに。
だから、ハロルドは、自分の人生を生きてる気がしない。
そんなハロルドが、
ひょんなことから出会うのがモード(浅丘ルリ子)です。
モードは、ハロルドなんか足元にも及ばないほど、「フツーじゃない」!
大きなお屋敷の中で、母親一人をおろおろさせるのが関の山のハロルドの破天荒さなんか、
まーったくカワイイもんです。
毎日新しいこと、ワクワクドキドキすることを求めて生きるモード。
自分が「いい」と思ったら、警察が「悪い」といっても教会が「だめ」といっても、
おかまいなしに行動するモードに
ハロルドは、最初はただただ呆れるばかり。
でも、
彼女の家に行き、彼女の大切にするものたちにふれ、
彼は気がつく。
二人が、同じものを美しいと思い、同じものをつまらないと思うことを。
これは、19歳と79歳の恋ではなく、
魂と魂の結びつきのお話なのです。
自分が所属する社会に、自分を理解してくれる人がいなかったハロルドが、
初めて出会った「同じ魂」。
それは、モードも同じ。
最高のパートナーを失った後、
きっとモードも孤独だった。自分をわかってくれる人、一緒に楽しむ人がいなかった。
だから、
ハロルドに初めて会ったときのモードはそれほど魅力的じゃないけど、
彼と一緒にいる時間が長くなればなるほど、
モードは美しく、可愛くなる。
時々、モードは静かに泣く。
幸せすぎて、涙を流す。
いつもポジティブで、生を謳歌するモードだけれど、
自分がもうすぐ80歳であることは、変えられない……。
ラストシーンを見ながら、私は涙ポロポロ。
これって、ジゼルに通じる!
今風に言えば、少年、リアルを知る、の物語。
かけがえのない生は、
かけがえのない愛を知って、初めて実感できる。
それが、ひしひしと伝わる幕切れでした。
浅丘ルリ子のセリフの美しさ、「伯爵夫人」を名乗られて違和感を感じない気品にあふれる。
ともすれば説教くさくなる言葉が、彼女にかかると夢と冒険を語るワクワクに変身。
「AAA」のメインボーカル・西島隆弘は、本格的な舞台は初めてだというが、
大女優をむこうにまわして気後れせずにしっかり演じる。
特に後半は、ハロルド自身の「成長」をにじませ、浅丘をリードするラブシーンはステキ!
杜けあきはコミカルな演技で狂言回し的な訳を見事にこなす。
舞台転換が多く、ストーリーがあちこちに飛ぶ前半は、杜が一本通った大黒柱となって
物語を支えている。
後半1シーンだけだが、浅丘と杜の二人が揃っての芝居は、
さすがの呼吸で大いに観客をひきつける。
ミュージカル「FAME(フェイム)」への出演をきっかけにブロードウェイでも勉強してきたという
本田有花がハロルドの見合い相手のうち二役を演じたが、
どちらもよかった。
特に女優役は光った。彼女の舞台をもっとみてみたい。
逆に、精神科医役の村上幸平、神父役の川久保拓司は、
もう少し役についての理解がほしい。
赤毛ものということもあり、セリフがうわすべりに聞こえる部分が多かった。
この「ハロルドとモード」、なんと1971年の作だという(コリン・ヒギンス)。
舞台だけでなく、「少年は虹を渡る」という映画にもなったという。
知らなかった。不覚。
ヴェトナム戦争のあった時代に作られたアメリカの戯曲を、
2008年の今、私たちに訴える作品として演出した青井陽治氏の手腕に拍手。
(ただし、場面転換にゴロゴロ舞台装置が動くのは、ちょっと興ざめした。)
今日の昼の部には、映画監督の山田洋次さんもいらしてました。
(と思う。私たちが行くときに、スタッフに送られて帰る監督とすれ違ったから)
いよいよ、明日の12時からの公演が楽日です。
ぜひぜひ、ご覧ください。
場所は天王洲アイルの銀河劇場。東京モノレールまたはりんかい線で。品川からもバスで行けますよ。
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