昨日紹介した「マクベスの妻と呼ばれた女」が
シェイクスピア作品という古典の大御所を土台にした
どちらかというと枠組みのしっかりしたオーソドックスな物語であるのに対し、
今日ご紹介する「ピン・ポン」は、
登場人物たった二人、舞台装置は卓球台一つ。
女は卓球台の上で眠り、男は卓球台の下で、絵を描いている。
女が目覚める。
いつ、どこで、だれが、みたいなものを封印されたまま
「男」と「女」(人物表にはこう書かれている)が動き出します。
その「なぞ」をはらんだまま展開する台詞のやりとりが
本当に素晴らしい!
台詞がものすごく少ないだけでなく、
一つひとつが短い。
「見せて」「ダメ」とか
「ほんと?」「うん」とか
「ただいま」「おかえり」とか。
時々起こるコトバの飛躍は、一見唐突ですが、
すべては一つの真実に向かって収束していきますし、
背景を知らされないまま「男」と「女」の関係をつきとめようと
二人のやりとりに耳を傾ける観客にも
「何か」を予感させるだけの美しい憂いが含まれています。
そう、
すべてが「詩」。
これは、「物語」というより「詩」なのです。
長い長い眠りの間に少しだけ目覚める女と、
その女を愛し続ける男の、せつない逢瀬を表した
最高のラブ・ストーリーです。
「男」を吹越満、「女」を上野樹里、みたいなキャスティングで
見てみたいな~、と思いました。
作者は明神 慈。
日芸〈日本大学芸術学部)の演劇学科の卒。
卒業論文で、すでに芸術学部長受賞している。
「ポかリン記憶舎」主宰。
以降、数々の賞を受賞し、日本国内だけでなく海外でも活動。
通常の舞台のほか、リーディング、そしてワークショップも行っています。
写真を見るまで、ずっと男の人だと思っていた。
和服の似合う、女性です。
- 舞台
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