【送料無料選択可!】ムサシ 特別版 / 舞台
主演・藤原竜也、小栗旬、演出・蜷川幸雄、作・井上ひさし
さいたま芸術劇場で産声をあげた「ムサシ」が
来年5月にロンドン、そして7月にはニューヨークで公演することが決まった。
日本語での公演となる。
蜷川演出の舞台は、今までも海外公演を何回も重ねているし、
どれも日本語での上演だったので
このテのニュースにさほど動じない人も多いのではないか。
だが、
「ムサシ」はこれまでとはかなり違うテイストのものである。
まず、シェイクスピア作品やギリシャ演劇のように、
もともとが西洋の古典を演出したものではない、ということ。
たとえ日本語で通したとしても、
観客はもしかしたら俳優よりも原本を知っているわけで、
私たちが「桃太郎」とか「かぐや姫」を学芸会でやるように、
彼らは小学生のときから「真夏の夜の夢」を演じていたりする。
筋が体にしみこんでいるからこそ、
ニナガワ演出の妙が際立ち、俳優たちの感情表現が生き、
評価を高いものとしている部分がある。
たとえ歌舞伎に翻案されても、筋は一緒だ。
対する「ムサシ」は日本人が作ったオリジナル。
ミシマ作品のように、海外でよく紹介されているいわば「日本の古典」でもない。
圧倒的なサブカル的芸術観でヨーロッパ人を驚かせた寺山修司の作品のような
「言葉はいらない」くらいのナマの肌触りがあるわけでもない。
繰り広げられるスタイルは時代ものであっても類型的な時代劇ではなく、
日本人だって時に戸惑うくらい悲劇と喜劇が入り混じり、
ある種くだくだしく、お説教チックなセリフも多い井上ひさし作品である。
それが
常連ともなったロンドンのバービカンセンターはいざ知らず、
ニューヨークにまで招聘された理由は
ずばりテーマ。
「復讐の連鎖は断ち切れるか」が彼らの心の琴線に触れた。
それだけ世界は戦いの連続に疲弊し、
出口を求めて進みあぐねているということかもしれない。
「打倒ムサシ」だけを胸に6年も生き
恨みの炎をたぎらせ、血走った目で乗り込んでくる小栗コジロウが
一体誰の、何の力で
最後仇敵・藤原ムサシに「体をいとえよ」と囁くようになるのか。
二人の演技力がさらに研ぎ澄まされ、
上質のバレエのように、
体から言葉が聞こえてくるようになってくれたら
私はうれしい。
海外公演に合わせ、さいたま芸術劇場での再演も計画されている。
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