圧倒的だ!
芸術が迫ってくる!
セピア色の夕陽の中、スローモーションで動く
中国の裏町の、妖しい人々。
瞳の奥がぎらりと光る。口元が、にやりと笑う。
胸がざわつくような音楽。
右から左から、出てくる出てくる屋台のような道具たち。
「鏡~、鏡。鏡はいらんかね~」
大きな鏡を背負って売る男。
頭に傘の骨だけのような帽子を被って、
その骨の先にはお面が一つずつ。
寺山修司ってすごい。
ヨーロッパ人が絶賛するの、わかる。
言葉なんていらない。
理屈もいらない。
歴史もいらない。
ただそこに、目を見張る色彩と見たこともない世界が展開するだけ。
平幹二郎、ほんとに75歳?
仲代達矢の76歳は、すごいけど76歳ががんばっている感じ。
平さんは、誰かの血でも飲んでるんじゃないか?と思うほど、
肌に艶、目に力、そして、
背中の上のあたりの肉付きが、
その後ろ姿が、平泳ぎの北島選手みたいなの。
若者の背中だよ、あれは。
だから、
女の子とからむと、なーんかどこまでもエロいのよ。
すごいわ、平さん。
演出は白井晃。
「フィクションの度合いを上げてください」という彼の指令のもと、
この舞台はものすごく完成度が高い。
セリフも、踊りも、動きも、歌も。
舞台装置も小道具も衣装も照明も音楽も。
息を呑み、身を乗り出して吸い込まれるようにして
「見世物小屋」をのぞいていると、
あっという間に100分が過ぎてしまう。
カーテンコールに登場した人々は
「やりました!」とか「ありがとう!」じゃなくて、
「ほらほら、面白かったでしょう?
あ、タマシイとられてませんか?」と
ニヤニヤしながらこちらを見ているようにさえ感じる。
妖しい!
クセになりそうな時空のエアポケット。
頭は冴え冴えとしているが、体は宙を浮いているような……。
リクツを越えた感情の高ぶりが、ここにあります。
東京・渋谷のPARCO劇場で。昨日が楽日だったんですね。
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