必見である。
「笑の大学」(但し二人芝居の舞台版)を作った三谷幸喜の
おそらく新たな代表作になるだろう。
PARCO劇場のチケットがとれなくてKAATに行ったが、
あの大地震の前、あるいは最中に見るより、
それから1か月経った今見ることで、
この戯曲の優れている部分がいっそう浮き彫りにされる。
権力に擦り寄ってしか生きられない社会というものが
いかなる「権力」と
いかなる「国民」によってできているか。
「虐げられた人々」について
「それ以外」の人々は何をどう思って生きるのか。
現在、国の原子力行政について、
マスコミや学者の一部(というか大半というか)が
きちんとした批評ができないのはなぜなのか、とか、
事ここに至って「それっておかしくないですか?」と初めて反対すると
「今まで恩恵を受けてきただろうが」「協力してきただろうが」と、
お前も共犯だぞ、めいたことを言い出すところとか、
一人ひとりがそれぞれ人生を、命を、家庭を、友人を、仕事を持っているのに、
「◎◎人」という記号でひとくくりにされて、
何千人、何万人をひとくくりにして「処理」されるところとか……。
ほんとにいろいろ考えさせられた。
すごい舞台です。
俳優陣も見ごたえあります。
特に風間杜夫と小林勝也は存在感。
今井朋彦による軽妙な不協和音。
「ふつうの人」の柔らかさと残酷さが光る石田ゆり子。
はまり役のシルビア・グラブ。
白井晃もよかった。
三谷という人は、役者のよさをわかって使うことのできる人だと
改めて痛感しました。
座付き作家ってこういう力があるのね。
それから…念のために言っておきますが、「喜劇」ですよ。
笑います、たくさん。でも、終盤は胸が苦しくなるほどの悲劇が待っています。
深いです。
井上ひさしさんばりによーく調べ上げて作られています。
私はこの前ブロードウェイでストレートプレイも見ましたが、
作りの見事さという意味では数段こちらが上に思いました。
練り上げられた構成がほんとに見事。
このまま、言語を変えて欧米でもどこでもいくらでも上演できる。
ドイツの話だから、「置き換える」必要がない。
外国人に「陰翳礼讃」を文楽使って舞台化されちゃった日本ですが、
その日本がゲッペルスとユダヤ人問題を舞台化できたっていうのも、
やっぱり少し離れたほうがわかるものってあるのかもしれませんね。
KAAT(神奈川芸術劇場)で、5月1日まで。
絶対見るべき!
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