別役実の戯曲を、丸尾聡演出で。
「夕空はれて~よくかきくうきゃく」
別役さんの戯曲というのは、どうしてこんなに不思議な感覚を
私たちの心に残すのだろう。
人と人との間に「なんとなく」横たわっているアバウトなコトバの取り決めを
「それで本当にわかり合ったといえるんですか?」と厳しくつきつけられるような。
あの人がいう「トラ」と私がいう「トラ」は同じものなのか。
あの人が「トラ」といい、この人が「ライオン」というものを、
私はなんと呼べばいいのか。
一見、ただの揚げ足取りのようにさえ見えるコトバ遊びの裏の裏に、
人間社会の危うさが見えてくる。
「いやよいやよも好きのうち」という言葉があるけれど、
「ちがうんですよ」と否定すればするほど、
「ははーん、そんなにムキになるとは、やっぱり!」なんて感じたり、
「建前はそうでしょうが、ホントのところはどうなんですか?」と
うがってうがってうがって本音を引き出そうとする私たちの社会。
別役ワールドはそんな部分を
最初は他愛ない「笑い」だったところから「戦慄」へと展開していきます。
こわい…人間って、人間社会って、こわい…。
若い俳優で繰り広げられる舞台ですが、
演出もしている丸尾さんが役者としても一歩抜きん出ており、
別役さんの言いたいことをわかっている彼ならではの
絶妙な間合いとチェンジオブペースが、
ぐんぐんこのお芝居を引っ張っていきます。
テキトーに話を合わせたり、人の尻馬にのっかったりすることの危うさを
改めて思い知らされるお芝居でした。
31日まで。
- 舞台
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