何を隠そう、私の娘はGacktファンである。
娘、初のナマGacktに、私もついていく。
「眠狂四郎無頼控」
娘、力いっぱい拍手喝采。
連れて行った甲斐あり。
親孝行ならぬ娘孝行でありました。
娘と一緒にGackt情報にいろいろ首をつっこむうちに、
私もそれなりにGacktファンに。
あの東京ドームでのライブのオープニングには
テレビで見ていても度肝を抜かれた。
映像の中から飛び出てきたかと見まごう
リアル騎馬軍団!
先頭には映像よりカッコイイGackt!
勢い、
今度の狂四郎にも、すごーく期待していたんです。
何やってくれるんだろう??って。
だってGacktだもん。
…だから、今回の舞台、本編始まってすぐに
ちょっと拍子抜けしてしまいました。
以下、
かなり辛口。
Gacktファン、ごめんなさい。
私はGacktが好きだけど、
この作品はナマGacktを見る、という目的は別として、
舞台としてみたときに、「最高だった!」とは言えなかった。
ベタすぎる時代劇+笑いとるためのギャグ。
それも、全体的にかなりなスロウテンポ。
音楽がsugizoなんだけど、この音楽とCG使いまくりの映像が
前面に出てしまっていて、
どちらかというと、
音楽に合わせてセリフを配している感じさえあり、
セリフとセリフの間が長い。
ふと
この舞台は映像化することを考えて作られているんじゃないかと思った。
何も起こらない、何もしゃべらないこの時間は、
ロングからぐーっとアップにするための時間なんじゃないかって。
音楽はそこぐーっと盛り上がるし。
もう少し、役者さんたちの力を信じてあげてほしかったな。
山本匠馬、古堂たやは、若いながら舞台の呼吸を会得してはつらつとしていた。
杏さゆり、辰巳奈都子もよく声が通って悪くはなかった。
綿引勝彦、嶋田久作、田中健と、実力どころも揃っている。
ベタならベタで、もっと時代劇として人物を掘り下げるべきだった。
特に狂四郎の心理描写が少なすぎだ。
今までにない狂四郎を作りたいという意気込みからか、
「狂」の部分はほとんどなし。
残酷さはほとんど「噂」だけで、
本当は心優しく懐深く、正義感あふれ、ただ剣だけが鋭い、という設定。
いわゆる素浪人ものっぽくなっていて、
「極悪人なんだけど惹かれちゃう」っていうパラドクスは生まれる余地がない。
だから
狂四郎と対峙する三雲を演ずる嶋田久作のほうに
ぐっと感情移入してしまう。
市川雷蔵の狂四郎を知っている身としては
かえって三雲が狂四郎的な感じがしてしまうほどだった。
心の中にはりさけるほどの葛藤を抱えながら
寡黙に、残酷に、爆発的に生きていたのは
三雲のほうだった。
何度も言うけれど
これは役者の問題ではなくて、つくりの問題だと思う。
映像多用で舞台装置を簡略化できるがために、
場面転換が多すぎる。
それも、そのたびに暗転。音楽でつなげられると思っているからだ。
作・演出は非常に高名な人たちがやっているのだけれど、
彼らが連綿と続けてきた「明治座公演」的商業演劇臭と
Gacktという人間の持つカリスマ性とが
うまくかみ合わなかったのが不幸だったような気がする。
ここまでベタでやるならいっそ二部制にして
二部はGacktに思いっきり歌ってもらうショーとし、
彼の本来の歌手としての魅力も全開にすればいいと思った。
(私、Gacktの歌、聞きたかった。ただし、娘いわく
「そういうことやると役のイメージ壊れるから、Gacktはいやがると思う」。
なるほど、と思いました。真のファンたるゆえん)
そう、
歌手と役者の違い、なのかもしれない。
歌手は3分間の中に人間ドラマを凝縮させる。
映画やドラマであれば、
短いカットごとに集中して作ればいいことだから、
そちらのほうは応用が利くのかもしれないが。
舞台というものはまた別の見せ方が必要だ。
3時間という長丁場を過不足なく使って、
一人の人間の人生をさまざまに生ききって、初めてリアリティが生まれる。
Gacktも
表情や殺陣、しぐさが本当に魅力的に感じる瞬間が多々あった。
それらの「瞬間」をうまく生かす「全体」を作れなかったものだろうか。
役者っていうのは板の上で
おそろしいほど本性をさらけ出さないと、観客には伝わらないものなのだと
改めて思った。
蜷川幸雄が役者たちの「身体」を「いじめる」のはなぜか、
つかこうへいが、成井豊が、役者達を「罵倒」するのはなぜか、
丸尾聡が、「最近の若い役者は身体を使わない。
使ってこそ見えてくるものがあるのに」と嘆くのはなぜか、
わかったような気がした。
「ふっ」と鼻で笑う演技に狂四郎の虚無と絶望をにじませるには、
どこかにおぞましいほどの狂気がほとばしる場面が書かれている必要があったのだ。
彼のラストシーンの言葉が蘇える。
「所詮、無頼の徒」
そっかー。
「眠狂四郎」だと思うから違和感が大きくなったんだ。
「無頼」の徒の「控」としてみなくちゃいけなかったのかも。
でも、それにしても
Gacktというせっかくの宝石を、使いこなせてない感じがしました。
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