作・演出マキノノゾミ。
第4回鶴屋南北戯曲賞を受賞した作品です。
地元の人間から「先生」と慕われる55歳の男・猪原(石丸謙二郎)の一家に、
ある夏の日、東京の高校生・秀一(藤村直樹)が訪れます。
春休み、大井川鉄道のSLを見に来てバイク事故を起こし、
友人を亡くしてしまったこの高校生は、
「早く忘れろ」という両親の言葉に反発、予備校の合宿に行くはずが
事故現場にもう一度やってきたのでした。
生きるとは、学ぶとは、人とかかわるとは。
そんなことを、まっすぐに諭す元教師には、しかし秘密がありました。
天性の教育者でありながら、15年前に「ある事件」で学校を辞めている。
娘・智子(田中美里)も元同僚の女教師・野村(金沢映子)も地元の警察官・徳永(酒井高陽)も、
その話となると、口ごもります。
男はどうして教師を辞めたのか。
みんなが避けているそのことが、後半大きな謎となって物語りを左右します。
素晴らしかった!
暗い事件を扱いながらも、観終わった後は、とても幸せな気持ちになれる。
だからといって、安直なハッピーエンドではありません。
ウェルメイドって、こういう作品にいうんですよね。
茶畑広がる川根町のとある酒屋のお茶の間で繰り広げられる、
深い、深い、人間模様。
ちゃぶ台のある昭和の一室だけの舞台ですが、
奥に広がる茶畑と大空の背景に奥行きがあって抜群の効果を上げています。
俳優陣も手堅い。
特に、猪原先生を心から敬愛する国語教師の野村先生の台詞にリアリティーが。
猪原先生が「熱血教師」だとすると、野村先生は「やさしくてまっすぐ」な先生。
人柄のよさと、人への思いやりがあふれます。
ちょっと偏屈だけど飄々としている祖父役の品川徹は存在感抜群。
コメディリリーフの徳永警官の哀愁漂う三枚目感も最後まで大切なハーモニー。
「高き彼物」は
可児市文化創造センターでの公演の後、
東京の吉祥寺センターでは、初日が7月4日で7月10日まで。
噛みしめるように味わえるいいお芝居です。
大いに笑えます。楽しめます。
観劇後、とってもいい気持ちになったので、
一人でお店に入ってシードル飲んでゆっくりしました。
- 舞台
- 23 view
この記事へのコメントはありません。