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「高橋さんの作り方」@あうるすぽっと

演技陣の母体は「る・ぱる」。
松金よね子、岡本麗、田岡美也子というベテラン女優
(というと彼女たちは怒るが)が1986年からずっと続けている演劇集団だ。
これまでに17回の公演を重ね、
永井愛作・演出の「片付けたい女たち」は再演、再々演までしている。
今回は「カウンセラー募集。初心者歓迎」の面接に集まった
女性3人と男性1人と採用する側男性1人を中心に話が繰り広げられるが、
テーマ自体は「自殺」や「ネットカフェ難民」「ひきこもり」など
かなり重いものの、
松金、岡本などの役作り、かけあいが見事で笑いが何度も起きる。
作・土屋理敬。
カウンセラーをやりたい、と思っている人の中には、
カウンセラーを受けた経験のある人が多い、とか、
カウンセラーって人の話を聞くことが大切なのに、
彼ら彼女らは自分のペースで話してばかりだったり、
最初はそういうところから始まるけれど、
最終的にはそれぞれの人生の年輪が、人の悩みを互いにほぐしていく、
そんな話である。
鐘下辰男演出作品としては、
かなりマイルドな仕上がりになっているのではないだろうか。
とにかく生きていこうよ、というメッセージは伝わる。
けれど、地味な話だったな~。
私が舞台に求めているものとは違うような気がした。
以下、ネタばれ含みますので、
これから観にいく人はご注意ください。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私、グランドホテル形式っていうか、
「なんらかの理由によってその場に居合わせた数人が、
 最初はアカの他人だけれどそのうちそれぞれの悩みが見えてきて、
 最後はその悩みがそれぞれに一段落して終わる」という舞台が
あまり得意じゃないかもしれない。
もしそういう構成だとしたら、
一本大きな流れがないと私はダメで、
今回の場合
「(前任者のカウンセラー)チバさんはなぜ死んだか」
「(そのチバさんにメールでカウンセリングを受けていたタカハシさんとは
 一体誰なのか」
この二つの「なぜ」がきちんと解決されていなければならなかった。
結局
最終的に出てきた「タカハシさん」のキャラが弱かったんだと思う。
それと
「人間、死ぬ理由なんて、本人にもわからないのかも」
という台詞に象徴されるように、
「チバさん」の死んだ本当の理由、死ぬ直前の思いも、
最後までわからなかった。
もっといえば、「ひきこもり」だったチバさんが、
なぜ、そしてどうやってカウンセラーになるべく、かつて「面接」に来たのか
そこのところがきちんと説明されていないので、
「チバさん」の人生の転換がよくわからなかった。
それで「?」マークが最後まで消えぬまま、消化不良で終わってしまったのだ。
時々、出演者(とくに男性)が台詞を?むのも気になった。
演技者が背中を見せる時間が多い立ち位置は、考え抜かれた演出なのか?
台詞を言っている俳優の顔が見えない、というのは
けっこうなフラストレーションだった。
リアリティがなかったとしても、
前向いて観客に向かって話すって、大切なお約束事なんだな、って
改めて思わされました。
作品的に、大満足、というわけにはいかなかったけれど、
松金さんと岡本さんの演技力には圧倒された。
「フツー」を越えたパフォーマンスの中に「フツー」の人の真実がある。
そういうテンションを、私は演劇に求めているのだ、とわかりました。

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