長塚圭史の「SISTERS」を見る。
1.PARCO劇場の空間に惚れる。
藤原竜也がファンクラブのトークの中で、
「ACTシアターはハコが大きすぎる」「PARCOでやりたい」と言っていた、と聞いたが、
その意味がわかったような気がした。
席は600くらい。
俳優座にも通じる空間で、少人数で展開する演劇に適していると思った。
以前「ウーマン・イン・ブラック」を見たことがあるが、
その時は後ろすぎてイマイチこの空間の良さがわからなかった。
今日はE列(8列目くらい)。傾斜のしっかりついていて、前の人も気にならない。
舞台上の緊張感、息遣い、迫ってきました。
2.松たか子の「変化」に惚れる。
彼女の演劇は、最初、硬さが見られるが、最後は爆発する、という流れのものが多い。
今回の役は、その「硬さ」も「爆発」も彼女の持ち味が光った。
常にセリフの口あとがはっきり鮮やかなのは、素晴らしい。
一人の女でありながら、その潔癖さも、淫乱さも、正義も、わがままも、
それが「一人の女」の持つ面であることを納得させつつ多彩に演じ分ける、
その力がすごい。
3.鈴木杏、負けてません。
松たか子と対峙する鈴木杏。
体の中に爆弾を抱えつつ、オトナ顔負けの大胆さで振舞う子ども。
ナマイキだけど、攻撃的だけど、弱い。
「青い鳥」の頃をほうふつとさせる演技だった。
舞台栄えは、松たか子に引けをとらない。
「化ける」「突き抜ける」を難なくこなす、この女優の将来に期待。
4.田中哲司の誠実さに、惚れる。
「ありのままの君を愛す」は、言うは易し、行うは難し。
その難しさに挑戦する松たか子の夫を、
非常に自然に、そして丁寧に演じて出色。
彼が最初から最後までブレないところが、この物語の救いとなっている。
5.どれが、狂気か。
先に観に行った夫は、松たか子扮するカオルが「狂っている」と言いましたが、
私には、ちっとも狂ってなんかいないように思えた。
かえって、どんどん自分を解放していくように感じた。
ドラマとは、物語の最初と最後で、主人公の気持ちが変わっていることをいいます。
新婚でありながら、どこか夫との間に距離をおいていたカオルは、
小さなホテルでの、鈴木杏との出会いから始まった二日間の後、
夫とどんな夫婦になるのでしょうか。
私は、見終わって、そればかり考えています。
まだまだ公演が続くので、今はあらすじについては何も語るまいと思っています。
先入観なしで、ご覧になってください。
少ししたら、もう一度書こうかな。
役者の力が非常に粒ぞろいなので、
見て絶対ソンはありません。
テーマはけっこう重いですが、描き方はかなりオーソドックス。
長塚さんの舞台は、どこまでも暗かったりおぞましかったりするものが多いですが、
これはその意味ではおとなしいです。
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