奈良岡朋子、樫山文枝、日色ともゑ、梅野泰時。
大御所です。
大御所見たさに行きました。
大御所、やっぱりすごいです。
発声、若いです。
しかし…。
昭和8年ごろの日常を描いたこの作品、
作られたのが昭和8年。
大恐慌でリストラされたけっこうアッパークラスの夫婦(奈良岡・梅野)が
赤門(東大)近くの下宿屋を開いたものの、
官僚の弟が大財閥の娘と結婚するにあたり
「兄が下宿屋の亭主じゃ恰好がつかない」と売りに出す算段。
弟の結婚の仲介役を務めた有閑マダム(樫山)は、
夫には京都に女がいることをほのめかしながら、
自分も若い男に色目を使い、
その男が自分との仲を断ち、今度は若い女にほの字としっておかんむり。
などなどの話が
「下宿屋」なのをいいことに、いろんな人が下宿屋を訪ね、
そして帰っていく中で繰り広げられる。
昭和8年であれば、ちょっとしたトレンディードラマだったかもな。
「フルートのおけいこしてたの」みたいな若い子がやってきて、
背広着た官僚の弟は、手みやげといってシャンパンやらパパイヤやらを持ってきて、
するとこの下宿屋さんはシャンパングラスとかデカンターとかをパッと用意。
そういう家は、この時代、かなりのアッパーなはずで。
それが古びた下宿屋となんともギャップがあり、
その上、
どうしても俳優の実年齢が実年齢だけに
途中で「40歳」とか言われても「え~っ??そうだったの??」とか。
いろいろアタマが整理できないことが多かった。
たしかに杉村春子は70すぎても18歳の役はやったが、
全員70台で全員で高校生物語をやったわけではない。
最初に設定をちゃんとおしえてくれないと、ちょっと戸惑います、はい。
そんな中で、
梅野泰時、軽妙な味で劇場を笑いの渦に巻き込む。
冒頭、セリフが「大丈夫か?」の感があってハラハラしたものの、
どんどんキャラが立ってきて、
三幕の最初など、
コタツの向こう側からにゅーっと手が出ただけで、
「あ、おじさんそこで寝てたのね」と、観客全員顔がほころぶ。
これって、すごいこと!
夫と2人で鑑賞したのですが、
いわゆる「時代劇」までさかのぼれば
かえって古い枠のなかに現代を見ることもできるけれど、
ちょっと前の「現代劇」って、
「今なぜそれをやるのか」を考えないと、伝わるものも伝わらないんじゃないか、と思った。
たしかに、客席は昭和8年を過ごした方々っぽい人で溢れていたので、
そういう人たちへのノスタルジーであれば、これは成功だったのかも。
でも、
このころの雰囲気を雰囲気としてだけ醸されて、それを受け止められるのは、
私たちの世代(ご想像ください)どまり。
演出方法などに、もうひと工夫あってもよかったような気がしました。
夫と2人で鑑賞したのですが、
「奈良岡朋子が演じた下宿屋の奥さん、最後に病院に行ったのはなぜか」
2人ともそれがわからず、
見終わってもしばらく、そのことで盛り上がりました。
「まさか妊娠じゃないよね?」
「でも、ご亭主役が45くらいだとして、10歳くらい若い奥さん当たり前だから、
そうすると奥さん35歳でしょ。ありえない話じゃないよね」
「でも、あの2人、子どもはいないよね」
などなど、
それはこのお話の幹ではなく、どう考えても枝葉の部分なので、
ここばかりで盛り上がる私たちって…。
そこに疑問を残しちゃうお芝居って…。
天下の民藝さんを向こうにまわして言いたい放題ですみません。
でも率直な感想です。
勉強になりました。
*三越劇場、初だったんですが、味わいのある内装で、
ここで「オペラ座の怪人」やってもらったらいいな~、などと思いました。
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