若い世代に、
それもほぼ無名の俳優達に、
どこまでこの作品ができるのか。
それは、
あの蜷川幸雄にしても、一種の賭けであったと思う。
彼は、使命感から賭けをした。
そして、
その賭けは、大いに当たった。
一途で、まっとうで、深みのある、最高の「ハムレット」を見た。
蜷川幸雄に脱帽する。
ぽっかり空いた一日、
思い立って2時間かけて劇場に行き、当日券に並び……。
行って良かった。
魅力的な人間たちの織り成す濃密な人生の迷路に放り込まれ、
「ああ、終わってほしくない!」と思うほど、この舞台に酔った。
本当に、幸せな時間だった。
シェイクスピアを愛するすべての人々は、
この舞台を観に行って、
シェイクスピアの偉大さを全身に浴びる至福の4時間を過ごしてもらいたい。
今、詳細を書いていられないのが惜しいのだけれど、
とにかく、主役が抜群の出来である。
川口覚のハムレット。
のっけから涙が出そう。
気弱な部分、不安な部分、鼓舞する部分。
ガートルードの土井睦月子もよい。
しかし、
「よい」といえば、全員よい。
最初の、歩哨の2人の科白からして、よい。
シェイクスピアの科白の意味が、一つひとつ心にしみこんでくる。
一語として不要な言葉はないことを、思い知らされる。
あそこにも、ここにも、
全体を理解するための伏線が、ちゃんと現れているではないか。
今回初めてわかったことも、たくさんあった。
それだけ、
コトバが肉になっている、ということだ。
若人に、乾杯!
彼らの努力に、本当に感謝したい。
もちろん、蜷川の演出も冴える。
ガラス張りの「地下」は非常に効果的に使われる。
そして、こまどり姉妹である。
ここで使うのか! というところで彼女たちの歌う
「幸せになりたい」は、
まさにハムレットのテーマ曲たりえるのである。
たった3分で、世界観を見せつける、名曲の力。
それを70歳すぎてなお、薫り高く、一流の歌声で披露できる、スターの力。
すべてが、舞台。舞台の力。
すべてを結びつけ、引き出した蜷川幸雄という演出家に、恐れ入った。
2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」
3月1日まで。
絶対に損しない舞台である。
さいたまネクストシアター、
ますます楽しみだ。
- 舞台
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