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「スラムドッグ$ミリオネア」とバレエ「海賊」


スラムドッグ$ミリオネア(DVD) ◆20%OFF!
連休に、テレビで「スラムドッグ$ミリオネア」をやっていました。
今回見ていて思ったのは、
ギャングの女になっているラティカと、彼女を救い出そうとするジャマールが
Kバレエ「海賊」のグルナーラとメドーラに見えたこと。
「逃げよう」というジャマールに、
ラティカはギャングの目を気にしながら「無理よ」とつぶやく。
そして「どうやって生きていくの?」と。
ジャマールは言う、「愛がある」。
ラティカは力ない笑みを浮かべる。
「ミリオネア」なギャングに囲われ、一見いい生活をしているようでも、
ラティカは足蹴にされ、ちょっとしたことで殴られ、びくびくしながら生きている。
彼女は奴隷なのだ。
「いいなり」になるほか、どんな自由も許されない。
逃げる自由どころか、笑う自由さえない。
ストリートチルドレンとして町のヤクザに牛耳られていた幼い日に、
ジャマールとその兄サリームと3人で、逃げられるはずだった。
でも、
走る貨車の上からさしのべられた手につかまれなかったあのときから、
ラティカはずっと奴隷だった。それもたった一人で。
力あるものがいて、
その周りに群がる手下がいて、
自分は「いいなり」になることで生きてきた。
「力あるもの」が町のヤクザから大物ギャングに代わっても
ラティカが奴隷であることには何の変化もない。
そのラティカが、
ジャマールの待つ駅へと自分から逃げていった勇気と決断はどんなに大きかったことだろう。
そして、その代償も……。
バレエ「海賊」で、ラジャのいいなりになるのを拒み通して不興を買ったグルナーラが、
最後には謝るものの、もう彼女に「特別」な地位は戻ってこなかったように。
「いいなり」になっていれば、「奴隷」としては、少しはましな生活ができたろう。
「自由」を「自分」を欲しがったばっかりに……。
この映画を最初に見たときは、ジャマールの物語として見ていたけれど、
今回はラティカの人生を感じることができた。
この物語でもっとも複雑で興味深いキャラクターが、
兄のサリームであることも再確認。
生活力に長け、弟ジャマールをコケにしながらも愛し、
いつもギリギリのところで救ってくれる兄貴。
この二人の深すぎる絆にも注目だ。
サリームはラティカとジャマールの仲に割って入るけど、
彼はその前にちゃんと、二人きりの夜をプレゼントしてるんだよね。
ただ、
ジャマールがおぼこかったんで、サリームの「配慮」に気づかなかった。
兄弟とはいえ、思考回路が全然ちがう二人。
サリームの最後の決断は、あまりに切ない。
終盤、サリームが宗教に傾いているところも描かれている。
神も仏もない、というか、
宗教抗争のために孤児となった彼が最後に行き着いたのが「神」だったとは。
彼の心の中に、どんな葛藤があったんだろう。
サリームはあくまで脇役だから、エピソードは断片的だけど、
トム・ソーヤーとハックルベリー・フィンみたいに、
サリームの目を通した逃避行っていうのも、見てみたいな~、と思った。
けっこう深いぞ。この映画。
原作本はこちら。
著者は今、駐日インド大使として日本にいらっしゃいます。

ぼくと1ルピーの神様

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