桜の森の満開の下【TDV-15180D】=>20%OFF!桜の森の満開の下
「桜の森の満開の下」は、坂口安吾の短編小説です。
悪行の限りを尽くしてきた山賊が、初めて心から惚れた女に翻弄されるさまが
「人っこ一人いない満開の桜の下には不気味さが漂う」ことを背景に展開されます。
簡潔な語り口と「桜」の醸し出す世界が多くの芸術家を刺激するのか、
今までに映画、演劇、本、といろいろなものが作られています。
篠田正浩の映画配役は、
山賊に若山富三郎、女に岩下志麻。
イメージがあまりに原作そのまんまで、キャスティングの妙を感じさせます。
野田秀樹の「贋作・桜の森の満開の下」は未見。
ごめんなさい。これについては今回は何も言えません。
今日ご紹介したいのは、現在新進気鋭の若手作家として新作を量産している
森見登美彦氏の「<新釈>桜の森の満開の下」です。
これは「〈新釈〉走れメロス」の中に収められている中の1篇で、
他に「走れメロス」(原作・太宰治)、「山月記」(原作・中島敦)、
「藪の中」(原作・芥川龍之介)、「百物語」(原作・森鴎外)が入っています。
いずれも有名な短編小説ですが、森見は現在の京都の話に置き換え換骨奪胎、
「山月記」の主人公・李徴を「究極のモラトリアム京大生」斉藤秀太郎になぞらえ、
彼をすべての作品にかませてオムニバスふうにつないだのです。
結果、リズムよく次から次へと読ませる粋な一冊となっています。
「山月記」も面白いのですが、私のイチオシは、「満開の桜の下」。
「師」と仰ぐ斉藤秀太郎に認められたくて小説を書き続けてきた男が、
ある夜、哲学の道の満開の桜の下で出会った女と同棲し始め、
今度はその女の言うままに書き始めると、小説は売れ出し、東京へ進出する。
しかし、男は「いったい何が自分らしいのか」がわからなくなっていく、というお話。
何がいいって、語り口、つまり文体です。
やさしいけれど、格調高い。
坂口安吾の世界を踏襲しながら、決して同じではない。
京都と京大を愛する森見の真情が
学生時代に置き忘れたノスタルジーとともに迫ってくるのです。
すっと読めて、じわーっと広がる、そんな1冊。
そして、
「原作、読んでみようかな」
必ず、あなたはそう思うでしょう。
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「桜の森の満開の下」
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