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「犬神家の一族」

「読んでから見るか、見てから読むか」の名キャッチフレーズが誕生したのは、
今から30年前。
本の角川の御曹司、角川春樹が映画界に鳴り物入りで進出した
その第一弾映画が、1976年の「犬神家の一族」でした。
そして今、再び「犬神家の一族」をやっています。同じ監督、同じ主役で。
市川崑監督が自作のリメイクに挑戦したのは、
「ビルマの竪琴」についで二回目ですが、
今回は、脚本も音楽も、カット割りも、ほとんど同じという試み。
初回の映画に酔いしれた世代には、いろいろな意味で興味津々の一本です。
私が観た感想。
松坂慶子が、絶品。映画女優、ここにあり、でした。
「腹に一物」というくせのある女性を、非常に多面的に演じていて、
さすがだなあ、と感心しきり。
シャルウィダンス?とかいって、司会なんかしてる場合じゃありません。
あなたは、やっぱり演じてナンボ。
がんばってほしいです!
松嶋菜々子も出来がいい。
「珠子」は古風で物静かで、とらえどころのない役どころ。
愛する人をひたすら待つ、というかたくなさが、一本筋が通る感じでよかった。
菊之助は・・・お父さんそっくりになっちゃって、それでぴっくり!
目のあたりとか、ほんと似てきましたねー。
佐清と静馬の二役、ということで、
顔の表情がマスクや特殊メイクで隠れている静馬の方の演技が、
私はなかなかよかったと思います。
石坂浩二は、歳をとりすぎた、という意見もあったようですが、
彼は彼なりに、「最初から、金田一は55歳くらいだと思っていた」といっていて、
ようやく自分らしい金田一耕助が演じられた部分もあるのではないでしょうか。
パンフレットにある石坂浩二の言葉の中に、「6本目の金田一」というのがあります。
「よーし、わかった!」の署長さんも、
「探偵・金田一」を、あまり胡散臭く思っていない。
それは、今までの歴史があるからだ、と。
これは1本目のリメイクではなく、6本目の新たな金田一なのだ、と。
じゃあ、なぜ、ほとんど同じ映画を作ったの?
それは、ひたすら映画に対する愛情なのではないか?
この映画に携わったすべての人たちが、
ベテランは、以前予算不足でできなかったところのリベンジに、
自分の仕事の総決算として取り組み、
若い人は、昔の映画を勉強し、今に甦らせようと勉強している。
「そうだ、これが映画だ」と、再確認するような、そんな雰囲気がありました。
そして最後に、音楽について。
大野雄二の「愛のバラード」が流れると、
身体がふっと浮いたような気がしました。
名曲もまた、ここに甦ったのです。
今の時代に「復員兵」とか「取り違え」とか、
そういう話がどれだけすっと頭に入ってくるのか、わかりません。
横溝正史が小説を発表した昭和25年には、ものすごくリアルな設定だったはずです。
76年の映画を見た私たちにも、戦争は遠いものでしたが、
まだ周辺にはこれらを想像させる様々なものがありました。
2007年。これはほとんど時代劇なわけで。
以前より説明的なものがあっさりしていたのが、ちょっと気になりました。
私としては、横溝正史の骨太なところも、もっと知ってほしい。
「なんか、昔っぽい映画だね」で終わらないでほしい。
小説も面白いんですよ。だから皆さん、
犬神家の一族
小説でもぜひ「読んで」みてください。
また、旧作との見比べも面白いと思います。
旧作はこちら。
犬神家の一族

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