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「砂の女」曲vs小説


鈴木茂/BAND WAGON 2008-Special Edition-
「砂の女」といえば、安部公房、なんですが、
私にとっての「砂の女」は、まずは鈴木茂。
元はっぴいえんどのギタリスト、鈴木茂がソロになって初めてリリースした
「BAND WAGON」(1975)というアルバムに収録されています。
1.砂の女
2.八月の匂い
3.微熱少年
4.スノー・エキスプレス
5.人力飛行機の夜
6.100ワットの恋人
7.ウッド・ペッカー
8.夕焼け波止場
9.銀河ラプソディー
このアルバムには本当にいい曲ばかりがつまっていて、
当時高校生だった私は、
「人力飛行機の夜」とか「微熱少年」をヘッドホンでガンガン鳴らしながら、
コタツの中に胸まで入れて仰向けになって、
夜のしじまをたゆたってみたりしたものです。
おかげで持ってるLPは聴き過ぎて針がとんでしまう代物に。
そのなかでも1番最初の曲として入っている「砂の女」の
イントロのギターは印象深く、
その音色そのものが、私にとっては鈴木茂を象徴していました。
この鈴木茂のアルバムと出会う前に
私は安部公房の「砂の女」を読んでいましたが、
「全然違うもの」として認識したことを、よく覚えています。
大体、小説自体、全然インパクトなかったし。
難解っていうか、ほとんど「何これ?」状態。
しかし。
今回安部公房の「砂の女」を再読して感じたのは、
この曲が、小説と同じ風景を内包している、ということでした。
特に「冗談は やめてくれ」というフレーズは、
主人公の叫びのように思われてなりません。
作詞をした松本隆には、ちゃんとわかっていたんですね、阿部公房の世界が。
曲の中では最後に男は女と肩を寄せ合い、
「砂まじりの風」が吹く砂丘から街へと帰っていきますが、
小説の主人公に、そんな明日はありません。
その「肩を寄せ合う」男女に愛は感じられても、
砂丘の穴の中で裸で暮らしあう男と女のアリ地獄に
いかなる愛も想像できなかった高校生に、
この小説が理解できないのは仕方のないことでありました。
オトナにしかわからない、
オトナのための愛と虚無と日常の物語、それが
安部公房の「砂の女」であります。

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