映画・演劇・本・テレビ、なんでも感動、なんでもレビュー!

  1. 舞台
  2. 12 view

手塚治虫の「ファウスト」と「百物語」

最近、ドイツ文学づいているワタシ。
行きがかり上、やっぱりダンテの「神曲」を読まなくっちゃダメかな~、
…と思っていたら、
夫の机の上に並んだ文庫の中に「ファウスト」発見!
こりゃ、読まねば!と手に取ると、
なんと、手塚治虫のマンガだった。
大体が、「ファウスト」は「ファウスト」、「神曲」ではない。
でも、
とにかくダンテへの入門だ!とばかりに読み始めた。
(…と思ったが、実は、「ファウスト」の作者はゲーテなのでした。
 以下、思い込みで突っ走る私の読書体験)

ファウスト
1950年に21歳の手塚治虫が描いた「ファウスト」は、
いわばゲーテの「ファウスト」のダイジェスト版。
たいそう堅物の老学者で誰からも尊敬されているファウストが、
悪魔メフィストフェレスと契約を交わし、心から満足のいく人生をもう一度歩むべく、
若返らせてもらいさまざまな経験をする話だ。
メフィストフェレスは、ファウストが「あー満足した!」と思った瞬間、
彼を地獄に連れて行ける、という約束をした。
私は原作をまだ読んだことがないけれど、
手塚治虫の「ファウスト」は、
悪魔が出てきたり、天使が王女に生まれ変わったり、と、
後年の「リボンの騎士」を思わせる展開。
どうやら、ファウストと手塚の心の交流は長く長く続くことになるらしい。
私が手にした本は朝日文庫の「ファウスト」で、
その中には、続けて「百物語」が収められていた。
この「百物語」、手塚治虫47歳の時(1971年)に描かれた、いわば「ファウスト」の翻案もの。
舞台は日本、時代は下克上の戦国時代。
主人公はファウスト・ハインリヒならぬ一塁半里(一塁=ファースト→ファウスト、半里=ハインリッヒ)。
彼が理不尽なお家騒動に連座し、斬首される寸前に「死にたくない!」と思うところから、
この物語は始まる。
どうみても非力でダサくてモテそうにない一塁を、
女の妖怪・スダマがイケメンの男に変え、名前も不破臼人(ふわ・うすと=ファウスト)と名乗らせる。
そして、一塁の望みである
「一国一城の主になりたい」「イイ女をモノにしたい」「満足な人生を送りたい」の3つをかなえたら、
魂を抜き取って自分のものにできる、という約束をするのだ。
25年の歳月を経て、手塚はゲーテの大作の核心を会得して換骨奪胎、
緻密な背景、魅力的なキャラクターを造り上げて素晴らしい物語を創造した。
日本人だからだろうか、ゲーテのあらすじを知ってなお、
「こっちのほうが上じゃないか?」と思ってしまう展開である。
一つには
日本人って、「天使」と「悪魔」っていう二律背反の法則が苦手でしょ。
「天使」の中にも「悪魔」が棲み、
「悪魔」もやがて「愛」を知る・・・みたいな。
「悪魔」の変容だけではない。
「人間」も成長する。
不破(一塁)とスダマとの関係が、長い間連れそうことで微妙に変化していくところ、
ダサい一塁が、魔法でイケメンになっても中身は前とおんなじ弱腰だったのを、
少しずつ少しずつ、自分の力で人生を切り開くべく努力していくところなど、
「魔法」や「妖怪」が出てくるけれど、そうしたSFチックな痛快さだけに終らないからこそ、
ぐっと引き込まれていくのだと思う。
騙されたとおもって、一度お手にとってくだされ。

手塚治虫は、未来が舞台の「ネオ・ファウスト」
という作品も手掛けている。
こちらは未読。
これも、読まねば!

舞台の最近記事

  1. 内博貴主演「シェイクスピア物語」

  2. 演劇界休刊の衝撃

  3. 動画配信を始めました。

  4. 「桜姫〜燃焦旋律隊殺於焼跡」@吉祥寺シアター

  5. 8月・カンゲキのまとめ

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。


Warning: Undefined variable $user_ID in /home/nakanomari/gamzatti.com/public_html/wp-content/themes/zero_tcd055/comments.php on line 145

PAGE TOP