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首藤康之の「Swan Lake」

昨日ご紹介したAMPの「Swan Lake」ですが、
私がこれを初めて見たのはNHKのBSででした。
それから数年後、ようやく日本に初来日、
何とかアダム・クーパーの白鳥/黒鳥をこの目で見たくて、
3枚もチケットとったんだけど、
結局「生クーパー」には出会えずじまい(泣)。
その3回のうちの1回が、首藤康之の白鳥/黒鳥でした。
黒鳥として舞踏会に乱入した首藤を見た時、
私はとても不思議な感覚に襲われました。
西洋人の中にただ一人立ちつくす日本人の首藤。
それは、「異分子の闖入」。
たとえばイスラエルでのユダヤ人パーティーに、パレスチナ人が一人迷い込んだような、
あるいは金持ちや上流社会の社交界に、工場労働者が作業服のまま踏み込んだような。
首藤はクーパーと同じように、出席者と踊りを交わすけれど、
彼らはまるで「もの珍しいもの」への好奇心のようにして首藤と踊る。
とりあえずお客様ですからね、無視するわけにはいきませんよね、というふうにも見える。
お手並み拝見と思ったら、なかなかやるじゃないの、という感じ。
また、首藤は踊っている間中、王子から目を離さない。
クーパーが完全無視で、王子の方がクーパーをみつめていたのと逆です。
誰と踊っていようと、首藤は王子だけをみつめます。
王子を求めて、黒鳥は来た・・・。
階級や環境や、あらゆる障害を越えて、一直線に愛する人へ。
その黒鳥の情熱に触れることで、王子は「本当の自分」を解放し、彼に応えていくのです。
首藤は、この来日公演の後もAMPに参加、
今度は王子役に挑戦します。
「王子をやりたいと思った」という首藤の気持ちが、
私にはよくわかった。
白鳥/黒鳥をやっていた時から、
王子の気持ちに感情移入していたのではないでしょうか。
小さな身体で思いっきり愛をぶつけ、
気がつくと自分の羽根がひどく傷ついていた・・・そんな白鳥。
首藤康之の白鳥/黒鳥も、忘れがたい舞台です。

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